ヴィランの発生並びに大暴れは、時と場所を選ばない。それはこのクリスマス・イブでも同じである。敵が緑と白と赤で彩られた街を赤一色に塗り替えて聖なる日を凄惨なる日にしているところを私は他のヒーロー達と力を合わせてなんとか阻止することに成功した。足止めされているところを見てから硬い雪玉を携えて距離18.44メートルからの速球ストレート時折変化球の大連投。町中かつ周囲に人がいるため個性で雪を出しての足止めは使えなかったがゆえの最適な手段だった。そこまではよかったのだが――このクリスマス特有の雰囲気が気に入らなかったのか敵の事件発生件数がいつもより多かった。応援要請による連続出動、鎮圧、引き渡しが繰り返すこと三度。ようやく全て解決した頃には東の空はすでに紺色に染まり切っていた。
光は灯りキャロルが鳴り響く中、市井の人々がそれぞれ思い思いの大切な人たちと一緒に家路を急いだりどこかいい場所へといく光景を見る。この光景が壊れていないことに一先ずの安堵感を得た上で覚束ない足取りで家路を急いだ。
清らかな鐘の音、歓声、きらびやかなイルミネーションに教会から漏れる現代のクリスマスへの不満を述べた神父さんの説教。
どことなく憧れを抱くもなんとなくこの場所にいてはいけない気がしたのでひっそりとした路地裏へと迂回する。空を見上げると、鈍色の空からちらちらと粉雪が舞い出した。
「あ――」
そういえば、と今朝方のニュースで気象予報士が「おそらく今日は雪になるかもしれません」などと言っていたことを思い出す。自分の個性を使えば自分の周囲はホワイトクリスマスに出来るが、それでもやはり自然の雪によるホワイト・クリスマスほど心が跳ねるものはない。しかし――連続する敵への対処が自分の体の持久力に追いついていないからかその心が跳ねる余裕はない。ゆっくりと、雪が積もらない内に急いで歩く。すでに地面はつるつると滑りつつあり、気を抜けばあっという間に転倒しそうだった。一歩一歩、踏みしめて、確実に歩を進める。ふらふらとした足ではそれすら難しいがなんとしても、帰るべき部屋に、戻らねばならない。あと5分、いやそれ以上かかるか等と考えていたときだった。
「あ――」
文字通り、足元を掬われる。右足が勢いよく滑ったときには時既に遅く高く聳え立つビル群が私を見下ろすような光景を視界が捉えてしまった。そうなってしまったときにはあっという間に次は酷いくらいの衝撃。それを避けるべく尻もちをつく体勢をとっさにとろうとしたとき――誰かが、私を背後から受け止めるような感覚がした。
「おつかれ様、ベラスニェーカ。その様子じゃかなり動き回ったそうだな」
衝撃はなく、体はかたく誰かに抱きしめられている。耳元には心地良いバリトンボイス。そして――視界の外から現れるくたびれた男。三白眼に血走った白目、無精髭に癖のある黒く長い髪。『見た』瞬間、現実をすべて認識する。彼が、今、私に、触れている。
「せ、先輩……どうして、ここに……?」
「ちょいと色々あってな。あとここではイレイザーヘッドと呼べ。普段お前はきちんと俺のことをヒーロー名で呼んでいるが……本当に疲れてんなお前」
「ごめんなさい、イレイザーヘッド……」
「まぁいい。ここで倒れてもらっちゃあ色々と合理性に欠ける結果となる。とりあえずお前の家まで送るからどこにあるのか案内しろ」
「……はい、わかりましたせんぱ……イレイザーヘッド……」
おう、と短く先輩……もといイレイザーヘッドはして私をおんぶした状態で飛ぶ。適宜道案内しつつ大好きな彼に背負われた状態で白い息の街を飛ぶ。既に体は悲鳴をあげているはずなのに、吐く息は雪のように白いはずなのに、体は熱くなってきて酷使した肩も軽くなら投げられるような気がした。
「一体何球投げた、ベラスニェーカ」
「ざっと、合計で30球は。最後の現場は囮となるために投げ続けましたので結構投げました」
「……中々いいペースじゃないか。お前の場合肩が命だからしっかり休めよ」
「大丈夫ですよ、私両投げいけますから。右投げメインですけどいざとなれ」
「そういう話じゃなくてだな……っと、ここか? お前の家は」
そうこうとしているうちに自分の部屋があるマンションへとたどり着く。大好きな先輩に送ってもらえただけでもありがたいか……が、この熱いひと時がもう終わるとなるとどこか一抹の寂しさを感じた。
「は、はい。ありがとうございます」
「歩けるか?」
そう言ってイレイザーヘッド……もとい相澤消太は私とそっと地面におろした。地に足はきちんとついている。一歩踏み出す。少しまだふらつくが彼に回収されたときよりはかなりましになっていた。
「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます。そして……なんか、その、申し訳ないです。今度はもっと持久力をつけます」
「そ、ならもう俺は帰るからゆっくり休みな」
「ま、待ってください……!」
思わず立ち去ろうとする消太先輩の手首を握る。大きくて、ゴツゴツしてるそれの感触に汗を吹き出しそうになるもぐっと堪えて珍しく彼に一つ、懇願した。
「ど、どうか……その……今日は……わたし、と、一緒に……」
「一緒に?」
「……一緒に、私と休んでいただけませんか……?」
え、と短く彼は感嘆する。もとから血走っていた目をゆっくり瞬きさせ、私の方に視線を移動した。
「それは、クリスマスだから?」
「いえ、ただ……私がその、先輩と一緒にいたいだけ、です。迷惑でしたらその……」
「迷惑、だなんて一言も言ってないぞ俺は」
そういって彼は私の手を握り、体を引き寄せる。至近距離、夜を体現したかのような男の目は黒くただ、じっと私のことを射抜くように見ており、口が開いたかと思えば――ただ、無言で触れるだけの口づけを私に落とした。
「まぁ、いいよ」
「は、……はい! そしてその、ありがとうございます!」
「じゃ、早く中入ろうか」
寒空の下服のポケットの中から鍵を出し、先輩の見ている前でガチャガチャと開く。冷たい空気が充満する部屋の中に、相澤先輩を入れた。
◇
暖房を入れてガチャガチャと装備品を然るべき場所に置き適当に冷蔵庫にストックしてあったゼリー飲料を先輩……相澤先輩に渡す。彼は短く礼を言った後、勢いよく中身を摂取し終えた。丁寧にゴミ箱に抜け殻を投下した後彼はゆっくりと私の方に近づいてくる。
「あ……相澤先輩」
「牡丹」
同じ空間に、近くに、私のプライベート領域に、彼が、いる。同じベッドに腰掛けて窓の向こう側で煌めいている街並みを眺めながら静かな聖夜を過ごしている。自分のホームグラウンドであるはずなのに、触れそうで触れられないような至近距離。先輩の手が、そこにある。
「……休まないのか?」
「あ、は、ごめんなさい。一緒にとお願いしたはずですが……そう言わないと、一緒に、過ごしてもらえないきがして……」
「そ、まぁいいよ。でもこうして牡丹と一緒にいるのも悪くはない、いや――」
そう彼が言ったあと、一気に左肩を引き寄せられる。大きくて厚い手ががっちり掴んでいて温かい。
「――むしろ、俺は好きだ。牡丹とこうして一緒にいるこの時間が、な」
低い声で、囁かれる。心臓の下の部分に響いて体が固まる。どう返せばいいのかわからなくてただぎこちなく先輩の方を見ることしか出来なかった。
「顔、真っ赤にして可愛いな……お前は」
その後、玄関の外でやったように彼の唇が私の唇に重ねられた。ちくちくと彼のヒゲが私の肌を撫でるがその感触すら、愛おしい。角度をかえつつ、啄まれるようにされた後唇の隙間から舌が入ってきた。
「……ボタン、ボ…タン……」
「せ、先輩……や、あいざわ、せんぱ……んぅ」
「名前で、呼んでくれ……ボタン」
「はず、恥ずかしいです……しょーた、せんぱい……ぃ」
「ひとまずは、それでいい」
深く、絡むようなキス。大人の、キス。彼にだけしかされたことのないフレンチ・キス。誰かがそのたぐいのキスはこんにゃくの味とか言ってはいたが実際は琥珀糖のように甘い味だったようだ。すきなひとと、しているからだろうか。こんな近い距離で彼を見つめるのは心が持たないのでずっと目を閉じていた。
その間に絹の布ズレの音が聞こえてくる。ジッパーの音にジャケット特有の軽い音。彼の手が私の体を這っている。何度か経験している筈なのに、未だになれない。
「しょーた先輩、その……んっ、何を……」
「お前を脱がせてんだよ。拒むのなら今のうちだ」
「いや、なんて……」
「なんて?」
「……いうはず、ない、です」
目を開いて、彼を見る。視界いっぱいに彼の優しいほほえみが映った。
一枚ずつ、私の服が剥がされていく。丁寧に、丁寧に彼の手によって私がむき出しになっていく。全て剥がされて一糸まとわぬ状態にされるには時間はかからなかった。
「……本当に、牡丹は綺麗だ」
「は、やっぱり恥ずかしいです……」
太い指で、ヒーロー活動の過程でできた傷跡だらけの私の体を撫でる。まだ口は深いキスの名残があるからか何かしら言おうと思えども思うように動かない。つつ、と壊れ物を扱うかのように彼の指が這っていてまるで全て探り出されているかのような感じがしてこそばゆい。
「牡丹」
そういうと彼は私を抱き上げる。そしてそのままベッドへと優しく寝かせた。起き上がろうとするもすぐに消太先輩が私の上にまたがってうごけない。がさごそとそのままの状態で彼はポケットの中から小さなハードタイプの名刺入れを取り出したかと思えばその中から小分けにされた正方形で平たいものを手に取った。
「いつも通りこれ、使うよ」
その言葉とともに、彼がまたがっているところの中央部分が主張し始める。熱くて暴力的な程のそれが、今か今かと出てくるのを厳重な布の中で待ち望んでいる。何回目かわからない程の合図に私の体の奥が甘く、疼いた。
「……お願いします、しょーた、せんぱい」
私の返事を聞いた彼はうなずいた後、勢いよく彼自身の服を脱ぎ捨てる。黒い衣の下の体は何度体を交えようとも見慣れることはなく、ただ逞しくも彼が「ヒーロー」であることを示す傷跡があるそれから思わず目を逸らしてしまう。衣擦れの音の後は、何かのパッケージが破かれる音。ああ、私はこれから――彼と、やらしいことを、するんだ。
「きちんと、気持ちいいとか痛いとは言ってくれ」
そう言った後、彼は私の足を開かせたあと手首を掴んで深くえぐるように唇を奪った。
「ん……は、あぁ……ん……」
「う、……く、んぅ……」
唇のつなぎ目からはびちゃびちゃと唾液が溢れ出す。唇が離されて少しだけ苦い唾液を飲み込みつつも、私の大事なところが薄いゴムを纏った彼の猛る情欲に充てがわれていた。
「ったく……牡丹の下の口は素直だな。ノックしただけでも涎が溢れている」
「ちが……んぅ……」
ぐり、ぐりと熱い先端が私の割れ目へ擦り付ける。もう少ししたら入れられそうだがわざと焦らすように彼の先端は私の別のところへとあてられる。
「ったく、今こうしてお前のクリトリスに俺のを擦り付けても割れ目からほしい欲しいって甘ったるい涎が下の口から溢れてんぞ。今すぐにでも突っ込めるなこれは」
「……っ、よだれなんて、そんな」
「そんな? ゆらゆら腰まで揺らしておねだりだなんて、どこまで淫らなんだ? お前は」
「っあぁ!」
ぱちん、と頭の中がはじける。ぴりりとした刺激が躰を駆け巡った。瞬間的に目をつむる。意識するための脳の回路が復旧しかけた時、私の腰には彼の大きな手が回されていることに気づいた。
「これだけでいって、かわいいな」
かすれた声で告げられる。はむ、と耳たぶを優しく甘噛されて力がよけいにぬけていく。大きな口と大きな歯の生暖かい感触で残存しているりせいがくずされていく。――ほしい、かれに、ぜんぶ、ぐちゃぐちゃにして、ほしい。
「みみ……みみは、ん……あぅ……」
「言葉に出来ないくらい好きだもんな、ここ」
「あう、あう……! 好き、すき……」
「……でももっと牡丹が好きなこと、あるの俺は知ってるぞ。いえるか?」
「……せんぱいのソレを、わたしの……なかに、いれてください……」
「ソレとかなかだけじゃわからないぞ。もっと具体的に言ってみな」
「あ、しょーたせんぱいの、ふとくておっきなアングラちんぽを……わたしのしょうじきなおまんこに、いれて、ぐちゃぐちゃにして、ください……」
「よく言えたね、牡丹。じゃ望み通りいれるぞ」
その言葉とともにぬぷりと彼の猛りきった欲が私の中に侵入してきた。一度はいったら、そのまま彼のものが深く、奥まで突き進んでいく。彼の低い声が吐息とともに聞こえてきて、顔をちらりと見るとそれを捉えたのか彼はニヤリと口角を上げて囁いてきた。
「よほど大好きなんだな、こんなにもボタンの中がしがみついて離れようとしないぞ」
ほら、といわんばかりに緩く中の肉をこすられる。ざらざらしたかんじがきもちよくて、いけないものがにじみでそう。
「せん、ぱい……だめ、そこ、へんになってしまいます……」
「今、先輩呼びはやめろ……牡丹。ここでは名前で呼べ」
「ご、ごめんなしゃい……! し、しょーた、さん……」
ずん、とお仕置きと言わんばかりに彼の剛直が私の奥を突く。体の中がきゅうとちぢむようで、さらに熱がかんじられる。ザラザラとした低い声がお腹に響いて脳内の回路は火花が散りそうだ。ゴツゴツとした手が力強く私を掴んで離さない。彼の顔が近づいてきたので顔を上げたらすかさず彼が無言で口づけを落としてきた。無精髭が少しだけ痛いが心地いい。
「んっ……好きぃ……や、好きぃ……」
「それでいい、牡丹。きちんと上の口で喋れることは喋れよ。下の口は……ずっとちんぽを咥えたままだからな……」
くちゅくちゅと接合部の中で熱い棒がかき回される。薄いゴム越しの情欲は治まることを知らないようで、未だに私の中で膨らみ続けている。くらいくせっ毛の中に輝く三白眼。ゆるい率動は速度が上がり小気味よいリズムで水音と体同士がぶつかり合う音が無機質な部屋に響き渡る。荒い息遣いが耳元に届く度に彼の顔をちらりと見るがまだまだ余裕そうに微笑んでいた。
「目を、背けるな。瞬きしてもいいが俺を見ろ」
低い声で消太先輩は言う。彼の逞しい体と大人の男を体現したかのような顔。直視するのも躊躇われるが先輩がそう命令したのでゆっくりと目を向けてみる。
「は、恥ずかしいです。せんぱ、いや、消太さん……あ、んぅ」
「呼び捨てでいい……ほら、口開けろ……」
言われたとおりに口を小さく開ける。そこに再び彼の口が塞いできた。今度は厚い舌が私の咥内に入ってきて、ぐちゅぐちゅと私の舌を絡ませてきた。奇妙な感覚で、唾液が混ざり合ってくる。
「あ……ん、ふぅ、んぁ、ああ……しょーたさ……しょー、た……」
「ボタン、牡丹……ったく、甘いな……」
「んぅ……あま、あまくなんて……」
「いや、甘いよ。口の中がね。もっと欲しくなるがお前のその様子じゃ余裕なんてもうないだろう?」
「ちが……ん、よゆーなんて……」
「こんなことされて、そういえるか?」
ほら、と消太さんがいった途端重く、彼の体がのしかかってきた。男性特有の凹凸が私の枷となって今の快楽から逃げられない。
「やぁ……あ、ああっ――!」
私の体に火花が走る。ぎゅうっと私の中が収縮されていく。0.03mm越しの熱さだけが確かにあって、彼にすがりつくようにのけぞった。火花が止んだ後、目を開く。彼が瞳に私の姿が映るくらいの距離にいた。
「案外可愛い声でいくんだな、牡丹は。正直言ってそそるよ」
「あんっ、あ、や、はげしっ……なか、なかがしょーたさんのでぐちゃぐちゃなんですぅ……」
「俺のがなんだって……? わかりやすく言ってごらん……! ほらほら……!」
「し、しょーたさんの……やらしい淫らな棒が……」
「官能小説のように言えって意味じゃない。きちんと、具体的な名称で……どうなってるか、言うんだ」
「ごめん、なさい……! し、しょーたさんの、熱いペニスで、私のやらしいヴァギナのなかを、かきまわして……ぐちゃぐちゃになってるん、で、す……!」
「それでいい……っ、ったく、俺のがさっきのおまえの言葉でまた元気になっちまったじゃないか……!」
ぎしぎしとベッドのスプリングがうるさくなる。息遣い、吐息、絡み合い。あつく、あつくしろいよるにまじりあう。つかれなんて思い出すひまもなく、変わらぬ星は唯睥睨するだけ。更に欲を増したモノを貪り、かき混ぜられる。
――――――くる、きちゃう。
「しょーた、さん、しょーた。すき、だいすき、すき」
「俺も、好きだ、ボタン……!」
消太さんの言葉で、なにかがピニャータのようにはじけるかんじがした。どくんと私のなかでみゃくうつ。
「―――あ、うれ、し、あ―――ぁ!」
「―――く、っ――!」
思わず彼に強くしがみつく。そして――白く塗りつぶされる意識の中、彼の欲望がゴム越しに放たれたようなかんじがした。
◇
「もう、大丈夫か。牡丹」
目がさめたときには午前二時。やけに暖かいと思ったらいつのまにかパジャマに着替えさせられていて、かつ……傍らには消太さんがいた。いつものような気だるい声と共に、あのときと同じように私のことを引き寄せる。
「わがままにつきあわせてしまって、申し訳ありません……」
「いいんだ、まあお前に関しちゃ珍しいくらいだしなぁ」
まあ、その分よがる姿は眼福だったが。と彼はつけたす。酷く優しい声色に私は思わず寝る前のことを、思い出して布団の中に潜ってしまうもすぐさま彼に捕獲され腕の中に拘束された。
「……気にするな。まあ今度はきちんとゆっくり休めよ」
触れるだけの口づけが、私の額に落とされる。少しだけ柔らかい気持ちを抱いてまぶたをゆっくり閉じた。その時、低い声でメリー・クリスマスと祝福する声が愛する人の声で聞こえた気がした。
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