「……ありがとう、今宵」
「いえ、その以前パーティが襲撃されてワインとかダメになったのでその補填のようなものです。ラベルが同じやつにしてみましたが……」
「本当にうれしいよ、ありがとう」
HLを見下ろせる部屋にて、私はワインを上司兼恋人に贈った。きっといいものを飲んでいるだろうし、こういうときどうすればいいのかわからなかったから取り合えず前にスティーブンさんが前のパーティー――突然の血界の眷属襲撃事件――で手持ちのワインがどうのこうのいったので同じやつをきちんとしたところで買った。ので贈った。きちんと彼がお礼を言ったので私の判断は間違えていなかったらしい。
「よかったです。その……人に何か贈るの初めてで」
「うん、それでいい。それにきちんと覚えてくれていて僕は嬉しいよ」
彼は傍らにワインボトルを置いて私の頭を撫でる。こげ茶の眼差しは春の日差しのように優しくて、とてもきれい。
「そうだ、せっかくだし飲んでみるかい? ヴェデッドさんのローストビーフもあるしきっと合うはずさ」
「……いいんですか?」
「いいとも、君にはとても助けられているからね」
そういうや否や彼はワイングラスを用意した。カウンターにはローストビーフが切られた状態で並べられている。ワインオープナーは銀色に光り輝いていた。
「あ、こういうのは私が」
「僕がやりたくて、こうしているんだ。いいね?」
「は、はい」
思わず立ち上がって手伝おうとしたけど断られたのでしぶしぶ椅子に座る。ささやかな誕生日会が行われるまであとわずか。赤いワインがこぷこぷとグラスに注がれていった。
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