初めての夜の前

「どうしたんですかその格好は」
「オテルに備え付けられていたからな、着てみたのだが」
 少女の目の前の男は、ただその彫刻の如く逞しい肉体に、軽くバスローブを覆っているだけの格好をしていた。チラリと胸元から傷が覗いている。
「あの、アーチャー、そのローブの下着ている……んですよね?」
「風呂上がりに着るものだぜ? メートル。着ていると思うか?」
「……確かに」
 少女は顔を背け、かつ平然と続ける。
「アーチャー、ここに来たのは他の陣営を追うために街に出る必要があって、だが居場所を悟られぬよう宿を転々とする必要があり、かつ宿代を安くするためです」
「だからオテルが沢山ある場所を選んでそこを移動するのか。しかし……」
「ええ、ここは別の用途がメインの宿であることは把握してますが、あまり目立たないからいいと思うのですが。窓隠れてますし」
「……なるほど」
 男はそれを聞いて静かに少女に近づき、そっと頷を上げさせた。
「いいか、メートル。オレは男だ。あんたはあまり他のことで体力を使いたくないだろう?」
「何が、言いたいの? アーチャー」
「場所、状況がこれ以上ないほど揃っている。そしてオレの格好、分かるな?」
 男は、少女の厚い唇に自身の唇を優しく重ねた。しばし視線が絡み合い、そして離れる。
「……ええ、ですがもし私にそのようなことをしようという人がいれば、いや、こんな私にはいないでしょう」
「いや、オレがいる」
 女は、それに少し微笑み小さな声で零した。
「ずるいよ、アーチャー」
 そして互いに抱き合い、寝台へと倒れた。男の逞しい手は、女のコルセットの紐を器用に解いてお楽しみの準備に取りかかった。

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