「―――ところで、何故これをダンデさんは許可したんですかねぇ」
私は恋人であるダンデを私の家に招いたものの、彼が「シャワーを浴びてくる」と行ってバスルームに消えたあたり、暇を少しばかりもてあましていた。何かないか自分の部屋を物色したがどういうわけか少し大きいボールを発掘。そして取り出してみると、そこには見慣れた顔が印刷されていたのである。
「ダンデさんの顔が描かれたポケボール、いや、なんでOK出したんですか……」
ダンデの顔が描かれたボール、もといチャンピオンボールはガラルにてカレー作りをある程度極めたものにだけ贈られるという一種の「特別な」ボールだ。これがもらえると発表された当初はネット上にて「とうとう公式が病気に」やら「いや、ダンデさんならノリノリで許可するわ」だの色々騒がれたそうだ。そしてそれを入手すべくカレー作りに躍起になったというトレーナーたちが一気に増えたという噂すらあるくらいとても話題になったグッズらしい。もとより、私もその一人であるが。私は今ではあまりキャンプをしないためこのボールは部屋の置物と化していた。それが彼に見られなかったということはまだ幸いだろう。
顔が描かれた本人はまだシャワーから上がる気配はない。それどころか鼻歌交じりでシャンプーをしているところだ。如何せん彼の髪は長い。それどころか彼は目立つ立ち位置にいるのでそれなりに外見には気を使っているのかこういった手入れは比較的時間をかける方である。恐らく20分はかかるだろう。
「ミスミ、いつもすまないな。キミの部屋に上がるたびにシャワー借りて」
「いいんですよ。貴方の頼みならなんでも」
「そっか。なら教えてくれ。後でこのシャンプーを試したいんだがどこで買えるんだい?」
「それなら……」
ドア越しで愛する人と会話する。向こう側には一糸まとわぬ彼がいると思うとどこか、疼く感覚がして我ながら呆れてしまう。何度彼と体を重ねようともその感情は拭われることはないだろうとぼんやり思案した。
「そっか、ありがとう。ミスミ」
とシャワーの水音が切れるとともに礼を言われた。それだけでも胸がいっぱいになり今すぐ音を上げそうになったがそこは懸命にこらえる。そして数歩歩いてボールと共にベッドへと身を投げた。
「どうし、て」
ぽつりと口から言葉が漏れる。目の前にいるのは愛する人の顔が描かれた球体。嗚呼、と私は嘆息した後体が少し疼く感触がした。今私のバスルームにはダンデさんがいる。しばらくそこから出ることはないのなら、と私は意を決して彼の口が描かれている所に自分の唇を当てた。ずっと、彼とは触れ合う時間がなくてそれは当然のことであるのだが、どうしても私は彼が欲しかった。我儘や、おねだりは彼のスケジュール等を鑑みるとそれらをあらわにするというのは私としても気が引ける。故に私はこうして自分を慰めるという行為を自然と覚えたのだった。ボールには唾液の痕が僅かに残る。球体は相変わらず表情を変えずに真剣な面持ちを維持していた。それがどこか、私と情を交わしている彼の表情にとても似ていて、もっと、もっととか細い声で呟かずにはいられない。いつも彼としている口づけを軽く、だんだん深くこのボールとかわしたくなってしまう。その証に私は舌でれろと口が印刷された部分を舐めた。まるでこう、フレンチ・キスをする時に唇を優しく開くように。
「やぁ、だんでさぁん……」
ボールを口からはなし、枕の傍らに置く。そして私はおもむろにタイツを脱ぎ、傷跡だらけの足を開く。流石に陰部に直接ボールをこすりつける行為は出来ないのでショーツは一枚だけ残しておく。壁に向かい合うようにして横になって、ワンピースの中にボールを潜り込ませて彼の顔をクロッチ部分に当てて、上下にこすりつけた。
「なめちゃ、やだ……」
ん、ああ、と声が出てしまう。少しだけ出てしまったがシャワーの水音はさっき再び聞こえ始めたからまだ大丈夫だろう。はじめての時にダンデさんが私の秘所を綺麗に、愉しむようになめとったのを思い出しながら私はボール相手に身をよじらせてた。
「あ、だめ、そこは……や、はげしく、あ、あぅ……」
ちらり、とボールの方を見やる。決して視線が合うはずがないのに黄金の瞳が私の目と合った気がした。そしてその目に全てが塗りつぶされる感覚がする。あ、だめだ。これ以上声上げたらバスルームにいるダンデさんに一人遊びのことがばれてしまいそうだがきっと大丈夫、大丈夫と思いたい。故に、声をあまり上げずにただ一人脳内にて作り上げられた彼の言葉と舌使いに身をよじらせていた。
―――こんなに、たらたらと溢れさせてキミは本当に……変態だな
「や、だんでさんにしか、こんなのみせませんってぇ……」
―――それはとても嬉しいなぁ。もっともっと、オレしか知らない君をたくさん見られるなんて
「も、だめ、そんなこと言わないでぇ……」
ぐちゃ、ぬちゃと布越しからでもわかるかのように私のところが濡れている。いつも一人でこうしているときより濡れ具合がとても、すごい気がするのは壁一枚の空間にダンデさんが裸で、シャワーを浴びているという現実があるからか。
「あ、だめ、そこ弱いの、だ、ああ……」
「へえ、キミはここが弱いのか、つまりここを攻めれば……」
「あ、むり、せめないでぇ、あ、あう……」
ふと、妙にリアルな声が私の脳に響いてくる。ここまでリアルな声を脳内で再生できるようになるくらい彼に飢えていたのかと我ながらぼんやり思ってしまった。少し、ぽたりと水滴が垂れてきたことが気になるが。
「だめ、だんでしゃぁん……囁かないでよぉ」
「駄目っていわれても、キミがこっちを向かない限りずっとこうするつもりだが?」
「あ、振り向きますから、あ、だめ……」
体ごとごろり、と声のしたと思しき方向へ回転させる。そこにいたのは紛れもなく、ダンデさんだった。全身へのタオルドライを済ませたものの、長い髪の毛はまだ水滴が残っているのが伺える。そして腰にタオルを巻いているのはいいが、たった一枚の薄手の生地の上から既に彼のものが臨戦態勢になっている、ということはうかがえる。
「―――ダンデ、さん」
「いや、驚いたよ。シャワーから上がってみたらオレの顔が描かれたボールでオナニーだなんて。それほど、オレに飢えていたのかい?」
低い声が私の耳を撫でる。抗えばいいのかもしれないがその声に乗せられた言葉に抗えるだけのは私になく、無言でただ私は首を縦に振った。それを見た彼はぎらり、と金色の双眸を鈍く輝かせた。
「なら、今ここに本物のオレがいるが……どうする? それともこのまま一人遊びをオレに見せるのかい? ミスミ」
願ってもない提案。飢えを充たすことが出来る機会。それを否ということは出来なくて、願いを口にした。
「いえ、どうか、ダンデさん、私を……抱いて、満たしてください」
そして、「分かった」という言葉と共に深く、口移しをするかのような深いキスが私にされたのだった。大きな口から出される厚い舌。それに絡まれてしまっては考えるという事すら放棄されてしまったのであった。
◆◆◆
「や、だめ……! あ、すごく、あ、いぁ……!」
「もう限界かい? そっか、ボール相手によがってたからなぁキミは」
全てひん剥かれたうえに、力強い腕に拘束されているためか秘所はねばついた蜜をまとわりつかせた状態で彼の前に晒されている。事実を突きつける言葉が私の心に深く突き刺さり、そのたびに奥底がじわりと濡れる感触がした。そしてその濡れそぼったところは彼の下によって余すところなくしっかりと舐められていた。敏感な割れ目に加えわざと充血した陰核も下で弄んでいる故か既に私の限界は近かった。
「あ……! あ、らめぇ、あ、あぁあ……」
「一人でこんなに興奮して……キミの中の俺はどんなことをしていたのか後でじっくり聞かなきゃな……?」
じゅるり、と蜜をすする音がした。それと共に甘美な刺激が私の頭のてっぺんからつま先まで駆け巡る。
「――――――っ!!」
あ、だめ、これ以上なんか刺激されちゃったら、私がとんじゃう。言葉にしたいのだけどそれらは全て喘ぎ声となって出力されるだけだった。
「もう限界か? 流石にオナニーしてたから早くいくのも無理はないな……。まだ本番があるからもうちょっと頑張ってほしいぜ」
「あう、あ、だんでしゃぁん、あだ、だめ、いく、いっちゃう……」
「ほら、言ってる傍からいくいくいってるぞ。こんなに淫乱かつド変態な女だったか? 君は」
ああ、声が体に響く。それだけでも十分きゅんきゅんしちゃうのにそんな言葉まで言われてしまうとは、私、もう既にどうにかなってしまいそうで、全てをダンデさんに委ねたくなる。
「ぁあ、こたえたくなんてぇ、あ、なぁいの……」
「そうかぁ答えたくないのか。なら残念だな、これでミスミの疼きをおさめようとしたかったんだが」
と、彼は私の割れ目から口を離した後、十分にそそり立っててらてらと体液で濡れているそれを私のふとももにあてがった。ぴくり、とそれは動いていていつも私の中に入れて、ゴム越しに欲を放っていると思うとその先にあるものを胸の中で乞うてしまいそうだ。
「あ、ちが、あ」
「残念、キミはボールの方がいいんだよなぁ」
彼は凛々しい眉をハの字に下げて私をじっと見る。傍から見れば私を押し倒しているような感じがして、そして体液が私の中に入らないような体勢でぎゅと密着していた。違うのに、ボールじゃなくて、貴方がいいのに。
「違うの、私、あの、貴方が……目の前にいる、あなたがいいのです」
小さく呟いた言葉。それが彼の耳に届いたのかぐいと彼の顔が私の視界いっぱいに映った。
「もう一度、もう一度いってほしい」
端正な口から紡がれるお願い事。それを叶えないという選択肢は既になく、ただ本能のままに私は答えた。
「貴方が、欲しい。貴方とやらしいことがしたい、のです」
すると彼は起き上がりどこからか個包装に包まれたコンドームを取り出した。
「起き上がれなくなるくらいするから、覚悟するんだぞ」
ぴ、と包みを破って丁寧に見せつけるようにコンドームをダンデさんのそれに装着する。優しさの膜はぴたりと彼の存在感を強調させ、ゆっくりと私の割れ目へとあてがった。ひくり、と私の中はダンデさんのものを歓喜するかのようにゆっくりと脈打つ。
そして、くちゅと彼のものが私の中へと入りこむ。それだけでも私の体に快楽が貫いて、それだけでもすぐてっぺんへ導かれそうだった。
「ほら、ゴム越しにもキミの中がこんなに喜んでいるのがわかるぞ。本当に……欲しかったんだな。正直でえらいぜ」
「だんで、しゃぁん……、わたし、あ、ずっとずっと、ほしかったんです……あなたが、あなた、がぁ……!」
くちゃぐちゃと色々なものが混ざり合って、とうとう私はひっそりと閉まっていたものをつい口に出してしまった。だがしまったと思うことはなく、どくり、とまた一つ私の中にある彼のものが脈打ってさらに膨張していくのが感じられた。
「あ、まだ、そんな」
「ずっと欲しかった、だなんて……恋人からそう言われちゃあ嬉しくないわけないじゃないか……!」
がばり、とダンデさんが私に覆いかぶさる。彼の逞しい胸筋が、腹筋が、脚が私の柔らかい肌に密着してくる。そして大きくて少し薄い唇が私の唇と重なり合った。端正な顔と閉じられた目が視界いっぱいに映る。時折長いまつげからは彼の琥珀色の目がちらりと開かれて見えた。目線が合うたびにどくん、と心臓が強く脈打つ感覚がする。だが繋がってるところでは彼のものが前後に、そしてわざとなのか水音をたてて私の中をかきまわしていた。
「ん、あぁふ……あ、ん……!」
くちゃ、と口づけは啄むものから深く舌を絡めるようなものへと変わっていく。十分くらくらとしているのに、貴方は私をどれだけ酔わせれば気がすむの。でも、心地いいの。ゴム越しに伝わる熱さが、うごめくそれが。
「ん……本当キミは、正直だな……! ぎゅうぎゅうと締め付けて離さない、そしてこんなにもいい顔を見せて、きちんと自分の想ってることを言えて……キミのそういうところが、好きだ……!」
「うれし、だんで、しゃぁん……!」
懸命に快楽に耐えながら笑顔を作る。ずっと彼から言われてる誉め言葉だけどやっと受け入れられるようになってきたのはつい最近のことで、拒むのが常だったからこうして「喜ぶ」ことが出来るようになったのはいいけどこれが精いっぱいだ。
そして私の答えにダンデさんは満足したのか、深く、深く私の中に彼のものを打ちこむ。
「あ、ああぁあ――!」
ぎゅ、と彼の体にしがみつき、ただただ強いそれを享受する。ぐちゃりぬちゃりと私の分泌液がダンデさんのものを濡らしていく。何かがきそうな気がするけどそれにまだたどり着きたくないような感じがする。
「や、だんでしゃん、あ、だめ、ああ、あ」
「大丈夫、すぐ【だめ】が【いい】になっていくから、ほらオレに任せて」
そして、耳元でその低くて甘ったるい弾丸が放たれる。
「―――どうか快楽に、堕ちてくれ」
それと同時に私の奥深くにダンデさんのものが強くノックされた。そしてそれがスイッチとなって――――
「あ、あ、だんでしゃあ、あぁぁぁああああん!」
――――私は思いっきり彼のことをぎゅっと掴んで、ただただ白い衝撃に塗りつぶされていった。ただその中でダンデさんから白く濁った欲が放たれているというのをゴム越しに感じていた。甘く、蕩けるような感覚に墜ちていった。
◆◆◆
甘く爛れたものから意識を浮上させる。ゆっくり、ゆっくりと疼きに堪えながら彼の方を見た。
「……あ」
「よほど、ためてたんだなキミは」
そういってダンデさんは私の唇に触れるだけのキスをする。それだけでもさっきの感触が蘇りそうで、どうしようもなくなるのだ。
「……ごめんなさい」
「謝らなくていいぞ、それにオレもとても今、ミスミが欲しいところだしな」
「あ、ああ……」
とても優しい笑顔で甘い言葉を彼は言う。何かそれに対して言葉を出そうとすれども完全に私の脳内はそれを出力できるだけの機能はなくて、ただ声にならない声を上げるだけだった。ただ私が恥ずかしがってる様子をダンデさんは楽しんでいるのか今度はちゅっちゅと私の体に口づけを落としていく。
「んっ、ああ……」
「綺麗だな、キミは」
優しい声で、また私の奥が疼く。そしてそれ以上に私の何かが書き換えられていくような感じになったのは何かの包装が破られた後だった。
「そしてそういうキミだからこそ、何度も何度も愛を交わしたくなるんだ」
―――今日は思う存分君を愛したい。
テノールボイスが私の耳を再び撫でる。ただ私はその言葉の魔法にかけられたように「はい」と答えるしかなかった。
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