「───」
きりりとした寒さが朝を告げる。孫市は、少しだけ体を震わせつつも、むくりと起き上がり、傍らで安らかに眠る女を見た。
「……まだ、跡は残ってるか……」
彼女の首元にある昨夜の名残を確認し、そっと指を這わせる。まだ寝ている女はぴくりとも動かず、夢の中にいた。それを見た孫市は、何を思ったのか再び向かい合うように同じ布団に潜り込む。互いの温もりのおかげか、布団が暖かい。
「……昨夜は俺達、お楽しみだったよなぁ?」
そっと、起こさないように肩を寄せてまずは額に口付ける。つぎにまぶた、鼻。どれもこれも、優しく起こさないように気をつけつつ落とす。だが、そうしているうちに昨夜の昂りをも甦り、赤い花はどんどん数を増していく。手、首元、胸……。心做しか女の寝顔も余裕が無くなっているように見え、未だ生まれたばかりの姿はもぞもぞと動き出した。
「これは、お姫様のお目覚めか?」
孫市は、口付けをやめ、生脚を絡ませて体が密着した様子で耳元で囁いた。
「おはよう、お姫様。昨夜は俺達、お楽しみだったよな……」
途端、女はゆっくりと瞼を開ける。眼前には昨夜情を交わした男。いつものように、とても優しげな笑顔を浮かべていた。
「お楽しみ……?」
ふと、自分の胸元を見る。そこには彼によって散らされた赤の跡がみだれ咲いていた。そして、昨夜起こった交わりを思い出す。
「あ、あわわ、あ、あ……!」
逃げようとすれども、足が絡められていてどうすることも出来ず、顔を手で覆う以外何も出来なかった。しかしその手は男によって退けられ、再び男の貌が視界いっぱいに映る。
「智。お前は本当に綺麗だな……」
そう言って孫市は智の唇を啄むように口付ける。逃げることの叶わない状況で、智は黙って口付けを受けた。
「……孫市、さん」
「ああ、とても可愛らしいな。戦場では勇ましく戦い、そして俺の中では一人の人間となるのだから。俺は、あんたの全てに首ったけなのだろうな」
「い、言わないで……。全部、本気にしてしまう……」
「俺は本気だぜ?」
「あ、あ……!」
また、孫市は智に口付けを落とす。触れるだけだが、とても、暖かい口付けだった。
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