花開く

 蝋燭の灯りは、一枚の着物を羽織った二人の男女を照らす。襖から除く夜の空から注ぐは影。男は、女の細い肩を抱いて、その白い肌は僅かながら震えていた。女は、眼鏡をつけてはいれど黒い髪の毛は長く、まっすぐに落ちている。男は、耳元で優しく、囁いた。
「智、今の気持ちはどうだい?」
「――――あ、あの」
 ちらり、と智は男の方を見た。まるで異国を思わせるような顔で、後ろにまとめられた髪。細い肩を抱いている骨ばった手。そして、蕩けさせるような低い声。女は、少しだけ顔を赤らめて、小さな声で答えた。
「まるで夢を見ているようで、いつ目が覚めるのか怖いところです……」
 はっと息をのむ声を上げ、慌てて取り消そうとすれど、男は女に自分の方を向けさせて、触れるだけの口づけをした。少しだけ、女は目を見開く。唇が離れ、ふるふると女の口は震えていた。
「あ、あの、まごいち、さん……」
「夢じゃないさ。俺が智を愛しているという事実も。そして、今ここで――――」
 一瞬の沈黙、後、孫市は智の状態を変化させる言葉を囁く。
「――――あんたの全てを受け止める、ということも」
「!?」
 びくり、と女の体が跳ねた。その調子で体の平衡感覚を崩したのか、智はあっけなく孫市によって一枚の布団に組み敷かれた。
「孫市、さん……! その、あ、私……」
「どうした? とても待ちきれないってか?」
「違います、その、私……」
 しどろもどろになりつつ、智はゆっくりと口を開く。彼女の言葉を聞きたいあまり、孫市は顔を近づけた。
「……まだ、こういったこと、してないんです」
 ――――――!?
「――――それって、あんたはつまり生娘ってことか」
 妙に真剣な顔つきで、孫市は事実を改めて突き付ける。智は自分が何をいったのか、というのを実感し、そしてじたばたと脚を暴れさせた。
「あ、ちが、そ、きむすめって――――! あ、ああ、あああぁぁぁぁああああ!」
 恥ずかしがる智をしり目に、孫市は彼女ににじり寄り言葉をつづける。
「いいんだ。別に恥ずかしがることはないさ。それに、生娘であれば――」
 ――気持ちいいことを、これからたくさん味わえる
 女は、それを聞いて顔を赤らめた。今、ここに武器や武具がないのならおそらく彼に反撃していたであろう。だがそれらはなく、ただ智は、一人の女としてこの閨にいる。
「……あ、その……」
「どうした?」
「……その、気持ちいいこと、教えてくれますか?」
 その言葉で、孫市は目の前の女の初めてを、いただくことを決意した。

◆◆◆

 薄い布で出来た帯は、細い腰から解かれ、智の頭上にて彼女の細い手を縛っている。着物ははだけられ、さらしすら解かれ、質量のある飾り付きの双丘が僅かながらに上下していた。
「……案外大きいんだな」
「あ、大きいって、その……」
「こっちの話だ。それより、あんたはここに触れたことはないのかい?」
 孫市は、そっと顔を彼女の左胸に近づける。そして、柔らかな肌に舌を這わせた。
「ひゃ……!」
 逃げようとすれど、手は縛られていて思うように動けず。ただ未知の感触に体を震わせられるだけだった。
「ん? 初めて胸に触れられた気分はどうだい?」
 また、水音をたてながら孫市は舌を胸に這わせる。
「触れる、というより……舐められる、でしょう……!?」
「それも、そうだな」
 智の問に答えた後、孫市は再び胸を舐める。空いた左腕は、女の右の方へ。普段なら引き金を引いている指は、柔らかい肌に沈めさせていた。時折感触を楽しむかのように揉んでみる。
「んっ……!」
 智は、唇を噛んで漏れ出そうな声を抑えつつ、ぴくぴくと耐えていた。ぴちゃりと音は聞こえ、愛してる男に体をまさぐられている。奇妙な感覚に侵食されているのを感じ、必死にそれから逃げようと足をじたばたさせた。だが、孫市はそれに気づいていたのか、先回りするように胸の先端にある飾りを、ぺろりと舐めた。
「あぁ……! そ、そこは……!」
「驚かせちまったかい? そこは、気持ちいいところだ」
 再び、飾りを舐める。じたばたした脚はやがて、すり合わせるようになり、ぴくり、と体が少し動くようになった。
「ちょっと胸を触っただけでこんな動きをするなんてな……これは、期待できそうだ」
 男は、胸を舐めている間に右腕は胸からゆっくりと下腹部へ。優しく、なぞるように触るとまたぴくり、と体が動いた。普段は女の丈より長い銃を操る腕は、今優しく女を悦ばせるために動いている。実際、こらえていた女の顔は次第に余裕の色を無くしている。息は切なくなり、男の貌を見ないように目を閉じている。そういったことに不満を持ったのか、孫市は次の行動に出た。
「智、なあ智。俺を見てくれないか?」
 優しくなだめるように、恋人に呼びかける。愛撫はやめぬまま、柔肌をじらす。それでも智は何も答えることはなく、ただじっと刺激に耐えていた。
「智、その愛しい愛しい瞳が見たいんだ。だからどうか見せてくれないか、この俺に」
 吐息と、胸焼けするほどの甘ったるい言葉と声が耳元に囁かれる。まるでそれは、目覚めのためにあつらえたようですぐにそれは、効力は表れた。おそるおそる、瞼は開かれて、ゆっくりと煌めいた夜を思わせるような瞳は男の貌を映した。
「……すみ、ません。どうしたらいいか、わからなくて……」
「ああ、それなら大丈夫だ。ただ、ゆるりと俺に身を委ねればいい。そして、素直になればいいんだぜ」
 そして、孫市は智の柔い唇に、自身の薄い唇を重ねた。ゆっくりと、味わうように女の咥内を舌で舐めとる。漏れる吐息は混ざり合い、そして女はただ口からの快楽にいっぱいいっぱいになっていた。
「――どうだ? 愛しい男と唇を重ねるのは」
 孫市は、口に銀糸が繋がれている状態で智に問う。
「……とても、苦しくて、でも、ずっとこうしていたい、とさえ思えます……」
 少しだけ、気恥ずかし気に智は小声で答える。そして彼女はちらり、と孫市の様子をうかがった。男はそれに満足したのか触れるだけの口づけ彼女の唇に落とした。
「そっか。もっと、もっとこれからそうなるぜ」
 また再び、舌を絡ませる口づけが交わされる。脚をじたばたとさせながら快楽に溺れていく中、右手は女の白い足の間を縫って陰にたどり着いた。
「ここ」
 そして、水音を立てて割れ目に指を沈ませた。いきなりの刺激に彼女は足を閉じようとするが、足の間に男の体があるためただ固定するだけにしかならなかった。
「ここが、俺たちが繋がるところだ」
 再び口同士が離れ、銀糸がつたう。孫市は、そっと女の秘所に指を沈めつつ女に教える。
「まあ、繋がることについては追々話すが……ここが、あんたが気持ちよくなるところだ」
 くちゅり、とひと際響く水音がした。そしてざらりとしたところが少し強く撫でられる。声にならない声が漏れ始め、ただ初めての感触に狂い悶えていた。にやり、と男は笑みを浮かべて一本の指でまだ強張ってるそこをほぐす。
「あ……うぅ、なんか……へんに、なりそうです……。あ、あぅ……っ、ひうぁ……」
「変になっていいんだぜ? むしろ変にならないと楽しめないからな、繋がるということは」
 そっと、男は女の耳元で囁く。とくり、と女の心の臓がなる音がした。智は男から逃げるように顔を背けるも、ちゅっちゅと男によって首筋を赤い跡で彩られる。まるでそれは一種の飾りのようだった。同時進行で、女の蜜壺を一本の武骨な指でなぞるように、まるでいつも使っている銃を扱うように丁寧になぞってほぐしていく。
「あ、まご……いちさぁ、ん……あ、だぁめぇ……」
「ん……大丈夫かい? どこがだめなんだ?」
「あ、変に、へんになって、もどれなさ……そ……あぅっ!」
「変になっても、大丈夫だ。すぐ戻れるようになるさ」
 ちゅ、と孫市は返事代わりに女の鎖骨に口づけを落とし、壺の入り口をなぞる。
「あ……っ!」
 智はとっさに男の背中にしがみつくように手を回そうとすれど布の拘束から逃れることは叶わず、ただ体を跳ねさせることしかできなかった。男の指の動きに呼応するように女の程よく肉が付いた腰は波打つように動いていく。
「なあ、智……もっと、もっと俺だけに見せてくれないか? お前のその艶めかしく、そして大胆に乱れ、堕ちる姿をさ……」
 男は女の頭上で拘束している白く細い手首を解放してやる。まっていたと言わんばかりに女は細い腕で男の背中に手を回した。
「そんなに、俺が欲しかったのかい?」
「ちがうの……。こわくて、どうにかなりそうで……」
「ああ、本当可愛いな……。大丈夫だ、どうにかなっても俺は貴女と一緒にいるから怖くないぜ?」
 男はそっと秘所から指を抜いて、そのまとわりついた透明な液体を自身の服の中に入れる。孫市はその指で自分のものがどうなっているのか触れてみた。案の定既に彼の銃身は火照り屹立していていつ暴発してもおかしくないくらいだった。
 ―――ああ、もうこんなになっているのか。早く、早く……
「智、俺を見てくれ」
 今すぐいれて、乱射させたいという気持ちを抑えつつ、男はゆっくりと女に見せつけるように自分の来ている着物を脱ぐ。普段は布に覆われている体は鍛えるところは鍛え、引き締まっていることが暗い中よくわかる。そして、男はおもむろに纏っている布類は全て後ろに放り投げ、ふんどしすら少しだけもったいぶって外した。
「―――あ」

 女は小さく感嘆の声を上げる。行燈の光だけでも男の逞しいからだと今か今かと暴発するのを待ち構えている孫市のせりたった銃身は見えていた。女は何を想像したのか、とっさに目線だけ彼からそらす。
「大丈夫だ。そんなに不安にならなくてもいいんだぜ?」
 ちゅ、と孫市は女の唇に自分の口を重ねる。その間に男は女の濡れそぼった秘所に自分のそれをゆっくりと浸食するように沈めていく。ちゅぷり、くちゅりと水音をたて、苦悶の表情を浮かべる智をいたわるように口づけする。
「ん――あ、うぐぅ、あ……」
「智……智……ほら、力抜いて……?」
「あ、うぅ……?」
 智は懸命に自分なりに力を抜こうと四肢からそれを脱力させようとすれど、甘美な刺激に再び体を強張らせる。男の銃身から伝わる温もりは女の細い体を侵食していき、震わせる。奥へ、奥へと進んでいきそのたびに女の喉から甘く、湿り気交じりの声が漏れた。
 そして男のそれはちゅくり、ちゅくりと進むうちに最深部へと到達する。すっぽりと沈んだそれは、女の壺の中でもそれなりの質量を保っていて、かつ存在感を主張していた。
「全部、入ったぜ?」
 孫市は女に低く、囁く。ぴくりと女の肩が跳ねた。
「え、入ったの、ですか……?」
「ああ、お前のここに、全部、俺がな」
 男はそっと繋がっているところから漏れ出てる液をこそげとるようになぞる。今こうして、繋がってることを思い知らされた女はぴくぴくと体を震わせる。
「あ、あぅっ……ま、まごいち、さぁん……」
「頼む、さんづけはやめてくれないか……? せめて、呼び捨てで呼んでくれ」
「……まごい、ち?」
「そう、それだ。それで呼んでくれ」
 再び何度目か分からない口づけを女に落とす。
「……っ!」
 女は先ほどと打って変わり、恥じらいを隠さずに男の口づけを受けてきたはずが、今回はただ喜んで受けるようになった。
「そんなにも、俺の口づけが気に入ったのかい?」
「―――安心、出来るきがしたからです」
「そうかい」
 男はそれだけ呟いて、今度は深くえぐるように女の唇を塞ぐ。口のつなぎ目で舌と舌は絡み合い、次第に口からは誰の物か分からない程に交じり合った唾液が溢れていく。こうしている間にも女は自分の中にある愛する人の欲が膨れ上がっていくのを感じていた。そしてそのかたちに自分が慣れていくということもありありと体感している。男も女の中が自分のそれに合わせてぴたり、とまとわりつくように形どられていくのがわかっていた。
 そして、男は女の柔い唇から自分の唇を離す。名残惜しそうに混ざった唾液が二人を頼りなく繋ぎ、そしてちぎれた。
「なあ、智。おまえの中が俺を離したくないらしいぜ? こんなに、俺のものを……かたちどるほど、だから、なぁ……!」
「っ……!」
 女はすぐに体を強張らさせ、反論しようと口をひらくもすぐに孫市によって触れるだけの口づけを落とされる。
「や、ちが、なんかこうなって、あぅ……」
「大丈夫だ、愛するもの同士、こういうことをするとこうなるんだ。安心してくれ……」
 ―――ずるい、なんで、こんな、こんな時に、孫市さんは、余裕で、いられるの
 女は心の内を声に出そうとすれどもそうするだけの余裕はとうに失せ、ただ生理的に流れている涙を浮かべつつ頭をたてに振る。
「よし、じゃあ動くぜ」
 ずるり、と形どられた女の中から男の陽の物が外に出る。熱をもったそれは唾液とは別のもので交じり合った液体と共に出てきた。先端部まで完全に外の空気に触れようとした時、またずぽりと女の中へとゆるりと入っていった。
「んぁ……!」
 今まで知りえなかったものが突如女を支配する。快楽とは似て非なるような、されど慣れれば快楽に変わりゆくようなもの。男がぐちゃり、くちゅりと動くたびにもどかしい感触がじわりじわりと女の豊満な体を、凍りきった心をさながら金属に伝わる熱のように広がっていく。
「ま、ごいち……」
「ん? 気持ちいいのかい?」
「わか、んないょ……はじめて、ですし……」
「ああ、そうだったな……今、もどかしいだろう?」
 こくり、と智は孫市の問に頷く。それをみた男は顔を綻ばせ、これ以上の喜びはないと言わんばかりの優しい顔と声で言った。
「そうだ、もう少ししたら気持ちよくなるからな……」
 水音は速度を増して、くちゅり、くちゅりからぷちゅぷちゅりへと変貌していく。女は声にならない声を熱の帯びた声で上げ、二度と離さないと言わんばかりに男の逞しい背中に爪を軽く立てる。足は男の腰に絡みつくように捕えた。
「ぁう……っ、あ、ひぃ……」
「ああ、本っ当お姫様は……可愛いな……っ!」
「かわいくなんか、ない……!」
「ああ、そういうところ含めて……っ、かわいいんだよ」
 ちゅ、と女の首筋に孫市は自分の跡をつける。それと同時に深く、奥まで女の中を突いた。
「――――――――っ!」
 甘い吐息と共に、女は弓なりに体を反らせのけぞった。白い閃光と何かがはじけ飛ぶ感覚が女を染め上げる。
「……あ、あぅ……」
 少し遅れて女は脱力し、彼に絡まりつかせた四肢はゆったりと重力にそって彼にすがる。ああ、と女は声を上げてゆるりと手放しかけた意識をおろしていた。
「お姫様、これがいくということだぜ?」
「……これが、いく……」
 ゆっくりと咀嚼するように女はひくりと腰を震わせる。掴みかけたようでするりと弾けてつかめなかったもの。それがどういうわけか名残り惜しく、ずっと浸りたいと女は思い口をゆっくり開く。
「どうした? あまりにも気持ちよかったか?」
 ん? と孫市は耳元でそっと撫でるように囁く。女は返答代わりに緩やかに未だ自分の中に入れたままの男の腰をぎゅっと足で抱き着いた。
「……まだ離したくないのかい?」
「おねがい」「です」「もう」「いちど」「して?」
 顔を赤らめ孫市の顔を直視しないように目を逸らす。そして蚊の鳴くような声で男にねだった。無論、女の声を聞き洩らす孫市ではなく、ちゅっと女の唇に自分の唇を重ねた後、そっと自分のを入れているであろう女の腹をなぞった。
「ああ、いっしょにいこうな」
 ずん、と男は返事すると同時に自身の欲の塊を女の奥へ突き上げた。
「あぁぁあん!」
 きゅうう、と女の奥底でそう啼く音がした。それと同時に勢いよく女は男の背に爪痕をたてる。武器を持つためによく切られていたが、あまりの甘美な刺激故か、赤い跡が男の背についた。
「……っ! 更にしまって、いやがる……」
 まるで欲が全て搾り取られるかのような感触に孫市はその端正な顔をゆがめつつ、女の秘所のさらに奥深くに自らの銃口を何度も何度もこすりつける。まるでそれは、一つになった生き物のよう。繋ぎ目からは液が混じって漏れ、布団にしみを広げていく。
「ね、まご、まご、いち……?」
「どうした……? もう、いきそうかい……?」
 ほら、と男は女の上体を起こし、胡坐の上に絡みつくように跨らせる。ぐちゃ、と更に奥で水音がした。女は更なる刺激に声を漏らして堪える。
「あ、ぁぅ……、ちが、す、す……」
「早く言った方がいいぜ? もう、限界だろう……?」
 うんうん、と女はこくこく頷いて懸命に言葉を作り出そうとする。孫市は女の様子を伺いつつぐちゃぐちゃと女の中をかき回していた。
「あ、あぅ……あ、まご、まご……ぁ!」
「ああ……ぐぅ、あ、いいぜその声……ほら、何が言いたいんだい……?」
「うぅ……あ、い、だ、ら、だ、い、いき、そ……」
 女はぱくぱくと口を開け閉じして、何か言いたげに口を動かす。だがこの状況下、そしてこの熱気でまともに読み取れることは出来ず、ただ孫市は智に甘い言葉と共に花開くような感覚を与え続けていた。そしてそれは、もうすぐ開花の時を迎えようとしている。
「あ、まご、だめ……あ、い、いっちゃう……! あ、ああ、あ……」
「ぐぁ、お、俺もだ、ぜ……、ほら、一緒にいこう、な?」
 女はひしと男の体を抱きしめて、男は女の腰を離さないと言わんばかりに掴み、奥底を突いた。
「や、まごいち、あ、ああぁぁあ――――――!」
「あ、智……っ! で、出るぁ……!」
 智は男の腕の中で盛大に開花させて、果てた。愛しい男の名前を叫び、ぎゅっと体を縮こませて、上り詰めた。孫市は締まった女の中でこれ以上ないほどの愛と情と欲を盛大に放った。
「……っと、よしよし、上手く二人で一緒にいけたな、智……」
 そっと武骨な手で男は女の濡れ羽色の髪を撫でる。女はまだ初めての甘さに慣れきっていないのか、ぴくぴくと体を未だ震わせていた。
「あ、まごいち……上手く、わたし、いけました……?」
「ああ、上手くいけてたぜ? お姫様」
「あ、あり、がとございます……。それなら、よかっ、た……」
 くたりと女は男にもたれかかる。胸の中で顔を埋め、男に目を合わさずにいた。
「ああ、それでいいんだぜ」
 男は女の中から自らの欲を抜き、そっと布団の上に女の体を横たえる。そして自分も一緒の布団に入り、彼女を腕の中に収めて寝ようとした時だった。
「……孫市、様」
 ころり、と女は男の方を向く。そして、今にも眠りに墜ちそうな声で呟いた。
「愛して、ます……」
 そして智は消え入るような調子で、眠りについた。向かいあうようにして寝ている孫市は、そっと女を抱き寄せて、祝福をするように囁いた。
「俺もだぜ、智。……ったく、普段からそう素直になってくれればいいのによ」
 ぎゅ、と孫市は女を護るように抱きしめる。そして、彼もまた眠りの海へと身を沈めていった。

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