「……よく、貴方はそんな言葉を吐けますよね。たとえそれが仮初だとしても」
「いいや、本当のことを言ったまでさ。貴女が望むのならなんなりといくらでも耳元で囁くぜ?」
「遠慮しますし、疑い塗れの言葉なんて聞きたくありません」
二人は、冬の小屋にて暖をとっていた。寄り添うように、ぴったりとくっつき互いの体温と炎で温まる。女は僅かに震え、顔を強張らせてはいれどそれを相手方に悟られまいとふるまっている。男は、そっと女の手を取ったがその手はいともたやすく振りはらわれた。
「つれないねぇ」
「孫市さん、お願いですから私の手を取らないでください」
「そういわれたら、あんたの手を取りたくなるじゃないか」
はあ、と女は短く溜め息をついて、少しだけ声の温度を下げて現実を突きつける。
「そんなんだから逃げられるんですよ。貴方のいうかわいこちゃんとかお姫様とか戦国一の美女なる人たちから」
「いや、違うぜ? あれはだいたい偶然というかなんというか俺の魅力が」
「よく言いますよね、貴方。だから信じられないんですよ。あまりにも言葉が……空虚すぎます」
女は炎の一点だけを見つめる。その表情は何処か物憂げで、まるで何かをこらえているかのよう。
「なあ、智。そんなに俺の言葉が信じられないのかい? 教えてくれ、何を言おうとも俺は咎めないからさ」
孫市はそっと女の震える手に触れる。その手が振り払われることはなく、女の顔は険しくなった。炎は女の顔をさらに強く際立たせる。
「―――それは、その」
ぱちり、と薪の燃える音がした。女はちらりと孫市の顔を見た。
「本当のことをいうと、よくわからないのです。というより、よくわからなくなったというのが本音です」
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