Je tu mendie/I beg you

Je tu mendie/

 貴方がまぶしい笑顔を見せる時、どこか温かい感触を覚えると同時にノイズが走る。具体的にいうと北欧の記憶が脳裏を過ってしまう。あの笑顔を別の彼があの子に向けていたという事実と甘い言葉を北欧の彼があの子に向けていたという事実が浮かんでしまうのだ。今の彼と北欧の彼とは同じ顔をした別人のようなものであるということは分かってはいるがどうしても感情というものはそれを拒絶しているらしい。ノイズが走らなくなりそうになったというところでつい最近あった事件―――具体的にいうと、スカサハ・スカディとナポレオンの間にあったちょっとしたいざこざ―――の顛末を私は聞いてしまった。
 彼女の考えることは当然であるのかもしれない。けれども自分自身の身勝手な嫉妬心は膨れ上がってしまう。何より、あの子の名を聞いた時の彼の反応が少し、いいやとても許せなかったわけであり、「現界したときのことは別の現界時には持ち込まない」という性質の彼がその子の名前を聞いた時にジョセフィーヌさんの名を聞いた時と同じような感覚になると聞いただけでも自分自身の回路が乱れてショートしそうになったくらいだった。今、このカルデアにいる彼は私に愛を囁いているのだけれどもそれがいつ終わってしまうのか分からない。彼からの愛や言葉と温もりを信じて溺れていたいがどうしても、どうしても気になって仕方がない。
 「愛して」「私を見て」「私だけを抱きしめて」そういう類の言葉を彼に言えばいいだけというのは分かってはいるが自分自身の言葉で彼との繋がりを絶ってしまうということだけはどうしても避けたい。それに、そう乞うたところでその願いが聞き届けられるかは分からないというのに。だから私は、自分自身の醜い感情を抑え込むことにした。表だけいいこであればきっと、彼は―――少なくとも私を見るかもしれない。そしていいこでいてかつ空虚を埋める行為―――つまるところ性行為―――をするにはどうすればいいのだろう。言葉にしないで、ねだる行動。私はそれをすることにしたのである。

◆◆◆

「どうかしたかい? メートル」
 深夜十一時。一般的にいうといい子は寝静まっている時間帯。夜更かしをしている悪い子はその数少ない頼れる大人にして唯一の恋人である『アーチャー』の前に出た。嗜んでいた葉巻をおいて、私のほうに向き直る。無機質なマイルームには二人。ああ、どうすればいいんだっけこういう時は。いきなり直接的な表現で伝えるのはさすがに風情がない。こういう時は……スキンシップ……いやどうすれば……。
「蒼、そんなにもじもじしてどうしたんだい? ほらこっちにおいで」
 大きな手が私の手首を掴んで引き寄せる。青い目がこっちを見ている。相変わらず彼の瞳に映る私はひどく惨い顔をしているようだ。しかし彼はそういうことを気にしないといわんばかりに私の体を抱きしめて、撫でた。まるでそれは、春の日差しのような温かさで、油断してしまえばつい眠ってしまいそうなほどに心地いい。
「蒼……オレの蒼……」
 浮かれたような調子の低い声で私の名を呼ぶ。同じようにして彼の真名を呼んでみようか、いややめておこう。ちょっとまだ怖いから。
「……んぅ」
「声が出るくらい心地いいんだな、うんうん」
 思わず私の喉から鳴き声が漏れる。彼がそれを聞き逃すなんてことはなく、まるで声を愛でるように私を抱きしめていた右手は私の厚い唇に触れられた。戦場にて戦意を高揚させるような声ではなく、誰か愛する人に向かって愛でるような声色で云う声。今の私に向けられているというだけでも十分に嬉しいはずなのに未だ胸に空いた虚ろな孔が埋まることはない。十分いいシチュエーションであるはずなのにまだ求めるのかと思うと少し自分が嫌になった。
「心地いい、ですか」
「そう、この可愛らしい唇から甘い声で鳴いてくれるほど安心してると思うとな、こっちも嬉しいんだ」
 どうやら私は今、目の前の男に「愛玩」されているらしい。その状況が冬の朝にくるまっている布団のように温かくて心地いい。もうこのまま彼の腕の中でまどろんで、ゆっくりそのまま彼に愛されて―――いやだめだ、孔を埋める手伝いをしてもらうために彼の元にやってきたのだから、それを果たさずになんとする。
「その、アーチャー、今回はお願いがあって来たのです……が……」
「どうした、蒼。何かしてほしいことがあるのかい?」
 ん? と青い瞳がこちらを見る。相変わらず彼の瞳は青い空のように澄んでいて、海のように深い色をしていた。その中に見るに堪えない私がいるなんて、耐えられるはずがない。
「実は……その……」
 私を、思う存分抱きつぶしてほしい。たったそれだけの言葉を言えばいいはずなのだがそれが喉と口腔の境界でつっかえているからかその言葉が私の口から出られない。しかもその行為を希う動機が動機なのでさらに言えるはずもないという思いが付与される。
 ―――どうすれば。
 目の前の彼は私が「お願い」として何を言うのかを待っている。彼の性格からすれば余程外道ではないものであれば叶えることに全力を尽くすことになるだろう。だが私は、ただ、自分の弱さゆえに、肉欲でノイズをかき消そうとしていて、その手伝いをしてほしいと、彼に―――
「蒼、とりあえず何を望むのかいってみてくれ」
 低い声で、思考の海から現実に引き上げられる。はっと私は彼の顔を見た。相変わらず優しく、綺麗な顔をしている。
「……とても言いにくいのですが……」
「ああ、それで?」
「ええと……実はその……わ、私を……」
「ふむふむ」
「あの……貴方さえよければ……だ……だい……」
 続きが、言えない。あんな恥ずかしいことを私の口からいえない。まごまごしていると彼が耳元でそっと何かを囁いた。
「何を、してほしいんだい? マドモアゼル」
 ああ、ダメだ。彼の低くてどこか心地いい声は反則だ。言えないようなことを、思わず何かのはずみでいってしまいそうになるのだから。それと同時に、彼の大きな手が私の腰を撫でる。お尻ではなく、背と尻の境界線。思わず体がぴくりと跳ねてしまい、何かが濡れる感じがしてしまった。
「だ……抱いてほしい、です……」
「もう抱いてるじゃないか。もっと分かりやすく言って御覧」
「……あの、その……せ……」
 くちゅり、と何か音がした。私の足の間にはすっかり欲で熱くなった彼の大砲があった。はやく、はやく入れて欲しいのに、征服してほしいのにまだその時はやってきそうにない。私が、それを希ってないのだから。だから私は、もうやけになって言った。言ってしまった。
「私のことを、抱きつぶしてまぐわってほしい、のです……」

◆◆◆

 其処から先は、早かった。「ダコール」というや否やキス、愛撫、そして服をひん剥かれて今は彼からのちょっとした拷問を受けている。大きな右手が後ろから私の胸をわしづかみにしている。左手は私の秘所に、大きな口は私の耳元に。それでいてぴちゃぴちゃと私の割れ目を鳴らしているのは彼の大きく肥大した砲身。しかしそれは私の中に入ることはなく、ただ割れ目をなぞることによって鳴らすだけだった。
「あ……っ、だめ、あー、ちゃー……」
 浮かれたような声で彼のクラス名を呼ぶ。それでもなぞって鳴らすことを彼はやめない。熱が割れ目を行き来していて、どうにかなってしまいそう。
「だーめだ、ここではきちんとオレのことを真名で呼んでくれ」
 ああ、この声だ。おなかに響くような低い声。そんな声で命令されちゃったら、どんなことでもすぐに従ってしまいそうになる。つまらないのか分からない理性とよくのせめぎあいはすぐに終わりを告げることになる。
「あ……な、なぽれおん、しゃま……?」
 ぞくり、と何かが脈打つのを感じた。それと同時に蕾に熱がくいくいとあたる感じがしてしまった。
「そう、そうだ……蒼……オレの愛しい愛しい蒼……」
 湿った吐息混じりで彼が私の名を呼んでいる。何かを懸命に堪えているようで、いつ枷を外すか見計らっている獣のような息遣いが直に伝わってくる。せんたんが、いじいじされて、しこうが、とろとろになっていく。
「名前……なまえ、よばないでぇ……おかしくなっちゃいます……」
「んだよ、こんなにおかしくなって、頭の中をえっちなことで満たして欲しいと懇願したのはお前さんだろう……? ほーら、こんなに乳  首がこりこりに硬くなってる上にクリトリスも……場所が分かるほどに肥大してる」
「んっ……っ」
 太く男らしい指が、私の乳首をこねこねといじる。だめ、そんなことしちゃ、はしたない女になってしまう。こんなにはげしく抱かれて、愛されて、さっきまで考えていたことも分からないくらいにペンキのようにべとりと私は塗りつぶされている。
「ちょ……」
 大砲が花びらと蕾を撫でている。すっかり慣らされてしまったからか既に蜜はあふれてしまっている。しかし大砲を動かすのに支障はないらしい。大砲の入り口が蕾にあたるたびに、なんか、へんな感じが浸食していく。そこから逃げたくて、私は思わず身をよじらせた。
「あ……や、ん……」
「そんなに心地いいかい? メートル」
「あ……あ……」
 声に出して「はい」と言えるはずもなく、ただ首を縦に振る。これが今の私に出来る精一杯だった。
「そうかそうか、こんなに感じちゃってるのを素直に認められて偉いなぁ」
「ちが……っ、素直なんて、言わないでください……っ」
「オレは嬉しいなぁ。素直に言ってくれた方が次はどう攻めればいいかこっちもやりやすくなるし、それに……」
ぴたりと割れ目に大砲の入り口があてがわれる。胸の先端は変わらずいじられたまま。いたずらされたわれめはすっかりとろとろになっていた。それでも、まだ、まだ孔は埋まったような感じはしない。
「……なにより、オマエさんももっと気持ちよくなれる。そしてオレはその蕩けた顔を眺めることが出来る。最高じゃあないか」
 耳元で後ろから、低く囁かれた。まるで甘くて、ぴょんと心臓が跳ねそうなくらい心地いい。そして、思わずその言葉に全面同意してしまいそうになる。聞く媚薬とはこういうことなのだろうかと考えつつ「その先」を想像してしまった。
 甘くて、蕩けて、もっともっと塗りつぶせて、彼で満たされるのなら。塗りつぶされた今なら多分、言えるかもしれない。ねだれるかもしれない。
「ほんと?」
「ああ、本当さ。現に今、もっと欲しくて欲しくてたまらないだろう?」
「……ほしい、欲しいです」
「ならどこに何が欲しいか、きちんと言ってくれ」
「わかってる……くせに……何をあててるのですか?」
「ナんの話だろうなぁ」
 そういって彼は割れ目に砲口をくちゅくちゅとこすっている。きゅうと胸が切なくなる。
「……あーちゃーの、いじわるぅ」
「ははは、でもきちんと言えたら欲しいものがもらえるかもしれんぞ?」
 ぴたりとこするのをやめて彼は耳元で悪魔のように囁く。テストでいい点取れたらご褒美をやろうと同じ感じだ、これは。それでも、その先の気持ちいいものが欲しくて欲しくてたまらない。ごくりと唾をのみ、決死の覚悟でゆっくりと私は口を開いた。
「……あーちゃーの、やつ。さきっぽだけじゃなくて全部、ぜんぶいれてください……」
「さきっぽ? 全部? もうちょっと具体的に言って御覧」
 ほらほらと言わんばかりに先っぽが割れ目にこすりつけられる。既に液体で濡れているのかほんの少し接合面がぬるぬるしていた。いつも彼はこういう風に私のおねだりを「詳しく」いうように促している。すこし恥ずかしいのだけれども口下手な私からすればこの手助けはありがたい。けどそろそろそういう甘えも捨てなければならないのだろうか?
「……は、恥ずかしい、です……」
「いやぁきちんと言ってくれないとオレもどうすればいいかわからんからなぁ。それに」
 はむと耳たぶを噛まれる。柔らかい部分にそっと跡を付けるように噛まれた後耳元でまた囁かれた。
「こういうのは二人で協力して気持ちよくなるものだろう?」
「……うぅ」
 まさに、正論。おとなしく私は意を決して恐る恐る、「してほしいこと」を口にした。
「……あなたのその、ぬるぬるしてるおちんぽで、私の中をかきまわしてきもちいことしてください……!」
「D’ accord, ma chérie.」
 ここちいいフランス語が耳に入ったとたん、くるりと体の向きを変えられて、押し倒されて、深くえぐるような口づけをされた。ぐちゅぐちゅ、くちゅくちゅと大きな口から大きな舌が私の口の中に入っていく。
「ん……っ、あぁ、あー、ちゃー……」
「蒼……、蒼……」
 名前を呼ばれるたびにきゅうと心臓が縮まる感じがする。体がでろでろになっていく。熱い芯が宿るのを感じる。溶けたチョコレートが合わさった時のようにどろどろと境界から何かがあふれている。低くて心地いい声が首筋を撫でている。すき、すき、すきがあふれてどうにかなってしまいそう。否、どうにかなってしまっているのかもしれない。
「あ、ああ……あーちゃー、好き……ぃ、だい、しゅきぃ……」
「オレもだよ、蒼……ふぅ、ほーら全部入った」
 とんとんとアーチャーが境目を指でなぞる。見ると私のぐちゅぐちゅになってる処にアーチャーの太くて熱くて逞しいおちんぽが入っていた。びきびきのばきばきが私のところにはいってる。
「あーちゃーの、おちんぽ……入ってる……あったかい、ねぇ……」
「いいや、蒼の中が温かくて心地いいんだよ。ほら気持ちよくて中がオレのちんぽに纏わりついてきてる」
 ちゅ、がぶとナポレオンさんが私の胸元や首筋に口を這わせては跡をつけている。痛みが走るたびに甘い声が漏れそうで、はやく中を動かしてほしいと希いそうだ。
「好き、大好き、すき……」
「オレもだよ」
 それを合図にびきびきのばきばきがぬぷり、と私の中から出ていきそうになる。その感触が甘美な刺激になっておもわず声を漏らしてしまった。
「これだけで感じちゃうのかい?」
「むぅ……へんたいっていいたいんでしょ?」
「変態って……まぁ間違いじゃあないけどな」
 そして、その熱いのが再びじゅぷりと私の中に入っていく。思わず私の壺が縮んでここちいいとこに彼の先端が当たった。
「飛び切りの、可愛くて淫乱なお姫様だ。オレの中でだけ淫らに踊るお姫様……」
 それを合図に彼の大砲がどくりと脈打った。
「あ……っ、あ、あぁ……っ!」
 ちゅぷちゅぷ、じゅぷじゅぷと彼のちんぽが私の中をかき回している。私の中の好きが太い棒によって掻き出されるようで心地いい。熱をもったそれは私の中をでろでろに溶かしている。それでもまだ彼の顔には余裕があるけれど、ほんの少し快楽を堪えているような笑みを見せていた。まるで私と同じ、きもちよさにひたっているようだった。
「ぐっ……ほら、オマエさんの中、オレのを離したくないっていってるぞ……正直でいいなぁ、いい子だ」
「いい子……うれしぃ……いい子……ふふふ……」
「ああ、いい子にはご褒美をやらにゃいかんよなぁ……」
 ぎらりと青い目が光る。それと同時にすぅと彼が息を吸う音がした。
 瞬間、ぐりりと私の奥に彼のものが押し込まれた。大きくて、熱くて、今にも私を白い液で塗りつぶそうとしているモノ。
「ひぃっ! あ、お、おっきぅ……」
「まだ、まだだ」
 そして彼はゆっくりと腰を動かし始めた。ゆるゆると動いていたそれはぱちゅぱちゅと音を立てている。境目からはどっちの液か分からないものがあふれ出していた。また、あたまがとろとろになる。
「ぁあ……もっと……ちょうだい……? なぽれおんしゃんの、もっともっとあついのとかちょーだい?」
「ああ、もっともっとオマエさんにやるさ」
 ちゅ、ちゅと口づけを交わす。上のお口も下のお口も深い口づけを交わして液体の交換をしているところだ。彼の唇は薄くて、大きくて、そして、温かい。私のおっぱいが彼の胸筋に押しつぶされている。足と足は絡み合ってまるで大きな鍋に入れられたスパゲッティのよう。あたたかくて、ここちよくて、もっとこういうことをしていたい。ぱんぱんと腰からはかさなりあう音がする。
「しゅき……貴方のことだいしゅき……あいしてる……」
「オレもだ、蒼……。世界にたった一人の愛しい愛しいオレのフィアンセ……」
 愛を伝え終えたと同時にどくん、とつなぎ目が脈打つ感触がした。その瞬間、何か私の中ではじけるようで、光が見えたような気がした。
「あ、だめ……ぇ、あ、ふわふわになっちゃう……!」
「ふわふわになっちまえ、ほら……!」
 そして彼は強く巨砲を奥にノックした。あまくて、せつなくて、ここちいい波が襲ってくる。
「あ、あーちゃー、あーちゃぁ……!」
「蒼……!」
 声を殺しながら嬌声をあげる。甘ったるい刺激が私の体を染め上げて私の中に何かが撃ち込まれた気がした。ふわふわが私の体を駆け巡る。まるで、頂点に至ったような感じがした。愛する人の感触がする。優しくて心地よくて、ずっと縋り付いてしまいそうな程温かい。
「……蒼、蒼」
「あー、ちゃー」
 ぬぷり、と何かが抜かれた。白く濁ったそれが私と彼を繋ぎとめている。未だ大砲は熱くなっていて萎える気配はない。
「とても、可愛らしい声だったぜ。もっともっとしたくなるほどに」
「嬉しい、です……。私も、もう一回貴方とこうしてたい、です」
「嬉しいねぇ。もう今日は眠れないな」
 そして、私とアーチャーでふわふわの、夢心地に溺れた。どれくらい長針と短針が追いかけっこしたか分からなくなるほどに。

◆◆◆

/I beg you.

「―――なぁ、オマエさんは」
 オレの隣で寝る女の顔はとても安らかで、縋り付くようにオレに抱き着いて、さっきまでオレに抱かれていた。しかし常日頃オレを見る目は時折どこか別の何かを見ているような感じがする。その答えは既に分かり切っていてオレ自身がしでかしたことによってもたらされてしまったものである。
「いつになったらベッドの上と同じような感じで素直になれるんだい」
 北欧異聞帯で負ってしまった火傷のような跡。誰も悪くないがゆえに自分自身で押し込めている痛み。いっそのことぶちまけてしまえばいいものを彼女はずっと、ずっと押し込めている状態だ。以前それに関して話し合ったりしたが、それでも深く残った傷跡は早々に癒えるものではなかった。
「まぁ、妬いちまうのも分かるが……今のオレに惚れているんだろう?」
 そっと彼女の頭を撫でてやる。きっと起きた後でこういった性行為でしか素直になれない自分を責めるのだろうと思うとほんの少し、やるせない気持ちになってしまった。そして自分に向けられた行為を疑う性質も絡みついているとなれば尚更だ。
「オレは、蒼に惚れているんだ。誰でもないオマエさんに首ったけでこの腕で抱きしめたくなるほどに」
 だからどうか、せめてオレの前では素直に思ったことを言ってほしい。オレに不可能はないらしいから、遠慮なんていらないのに。
するりと彼女が眠っているベッドに入り込む。温かい彼女の体温がこちらに直に伝わってくる。石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。彼女の白くて細い首筋にはオレが付けた跡がアクセサリのように散らばっている。
「……Je t’aime, ma lune.」
 瞼をゆっくりと下ろす。サーヴァントに睡眠は必要ない上に元々ショートスリーパーであるオレであるが今はせめて、彼女と睡眠を共有したい。だからオレはゆっくりと眠りに自分の身をゆだねた。

 せめて、メートルが次の朝を好きになれるように祈りを込めて。

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