「――なあ、ベラ……牡丹。お前は常にそれを食べているのか?」
イレイザーさんは一気にゼリー飲料の中身を吸い上げて摂取した後、私が握っている固形バータイプの食事を指さした。
「はい、基本的にこれだけですね。その分の思考を別のことに回している感じです」
「まぁたしかに、一つの食事に色々な栄養が入っているのは非常に合理的だからな」
「そういうイレイザーさんも、ゼリーを食べているのはそれがあるからですか?」
ああ、と一言だけ返事をして首を軽く縦に振る。すでに栄養を包んでいたものは抜け殻へと変わり適当なポケットへとしまい込み、静かに夜の鳴羽田を睥睨し続けた。
変わらずの煌めき、日常の謳歌、ただ楽しいことだけを考えている人たち。昔教科書にあったような漢文の授業でそんな感じの作品があったということを思い出しつつあの夜を頭の中で巡らせてみる。
「ああ、なんて――」
「お前も、感傷に浸ることもあるんだな」
「ないです。そんなものは」
「そういうことにしておくぜ」
ほらよ、と一つ冷たいものを体に押し付けられる。小さいが質量のある柔い物。落とさないように両手で受け止めて、ラベルを確認したら――それは、彼が先ほど飲んでいたモノだった。
礼を言おうと顔を上げる。しかし――既に彼は去っていた。
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