微睡の檻

「――女王陛下。おはようございます」

 徐に瞼を開く。そこにいたのはいつもよりも華美な衣装を身にまとったカリオストロ伯爵だった。しゃらしゃらと金属の音がこすれる音がする。その音は彼が私の首元にあるものをもてあそんでいる音だった。

「どうでしょうか、こちらの首飾りは。ああ、ご安心ください。決してダイヤで作られているわけではありませんし無論、どこからか拝借したものでもございません。月の輝きに似た白金の首飾りでございます」

 実に、お似合いです。と耳元を舐るような声色で男はささやいた。手を動かして首飾りを確かめようとする――も、手が、うごかない。それどころか四肢も、言葉も、はなせない。まるでこれじゃあ――かなしばり、ではないか。

「そういえば、女王陛下は今動けませんでしたね。無理もありません……私がそうなるように仕向けたのですから。ええ、日ごろから、常に」

 まるで勝ち誇るかのように伯爵は私の頬を撫でる。何も感じず、ただ彼に物言わぬなにかのような扱いをされるのみ。すでに私は彼の術中にいた、ということか。これじゃあどうして、とかどうするつもりか、なんて聞けるはずもない。

「ああ、女王陛下、何もいってはなりません。なりません。貴方はただ、私の言うことをただ只管に聞いていればよろしいのです」

 寝台の傍らに彼は移動する。決して布団の中へと入ることはなく、眺めるように彼は私のことを視界にとらえる。そして端正な唇は、言葉を紡ぐ。

「こうして貴方様をここにおいたのは、ただ一つ。――よそ見が過ぎるからでございます。ここに閉じ込めていればよそ見する、される隙間もなくなるでしょう。ええ、大丈夫ですよ。生活のほうはこの私が保証しますので女王陛下はこのまま、いい夢の中をお過ごしくださいませ」

 ちゃり、と白金が揺れる音がする。そして――こわいくらいに傍らの伯爵が、これ以上ないくらいの優しい笑みを浮かべる。もう、私はここから出られないのだろうとひしひしと動けぬまま実感したのであった。

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