屋根に雨が当たる音がひどくうるさくて眠れない。警報級とまではいかずとも外には出られそうにないのは明白。
何もやることがなくて、誰もいない。孤独を紛らわそうにも誰一人友達は、いない。
「一回でいいから、会いたいな」
いつも通り開いたFGOのマイルームにいるカリオストロに話しかけるも画面上の彼はタッチしてもランダムに定められた言葉しか話さない。当然、先ほどの独り言なぞ聞いてはいないだろう。掴み所のない伽藍の洞、真と偽が分からない貴方。真かどうかすら分からないような甘い言葉。それらに委ねたいのに、決してあなたは現れない。そうだ、それが現実なのだから。
脳内で色々巡らせながら優しいバリトンをひとしきり聞いた後、インターホンが鳴らされる。最近は何も注文していない筈、誰だよ居留守決めこもうかとモニターを覗き込むとそこには大男が映っていた。外は暗くて誰かすら、分からない。無視しようと決心したその時だった。
「お迎えに上がりました、我が女王陛下」
脳内に直接聞き覚えのあるバリトンボイスが反響する。
インターホンのマイクはオフにしているはずなのに、はっきりと彼の声が聞こえてきた。
「あなたがお会いしたい、と仰っていた故にここのはせ参じた次第でございます。ですからどうか、このドアをお開けになってください」
――――嘘。いや待て、そのはずはない。
画面から出てこないあなたが、本当に聞いていたはずが、ない。
いっそ居留守を決め込んでどうにか一夜をやりすごし―――
「お開けにならないのですか? では――致し方ありますまい」
一瞬、頭が真白になる。
かちゃり、と金属音がした後何が起きたかはすぐに認識できなかった。
否、既に認識した時には彼が目の前に、いた。
「サーヴァント、プリテンダー、アレッサンドロ・ディ・カリオストロ。ここに馳せ参じました」
翠と紅のオッドアイ、長く伸びた銀髪、堂々たる巨躯。そして、優しいバリトンボイス。紛れもなく、ゲームの中の彼が現実にいる。長い髪の毛はカーテンのように垂れ、雨に濡れた名残を残していた。
「一度とは言わせません、何度でも、ずっとにいましょうね。我が女王陛下――」
何度も戦いを共にしたサーヴァントが、目を細める。
自分の先ほどの言葉を悔いつつ、私はその彼の濡れた手を導かれるようにとった。
(参考書籍 『カリオストロ』A.N.トルストイ – 怪奇小説傑作選5収録)
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