「ねえ、俺たち夫婦にならない?」
それは、あまりにも突然のことだった。夜、事が終わり、ふわふわとしたまどろみの中で隣の愛する人から言われた言葉。さすがにそれが分からない私でもない故に、頭の中が白く弾けたような感覚がした。
「……馬岱殿? 何故、そんないきなり……」
「君と一緒にいると、本音を隠せないし、それに霜ちゃんを護りたいからだよ」
まるで私を慈しむかのような目で彼は私の頭を撫でながらいう。大きな手はとても暖かい。だからこそ、彼に全て委ねてしまうのが怖かった。
「その、私のような女と夫婦になるなんて、貴方にはふさわしくないと思うのです。だからその、考え直して……」
「考え直したよ。何度も何度も。でもやっぱり、君以外考えられない」
「でも……」
次の否定の言葉を言う前に、馬岱は私を引き寄せて胸の中に閉じ込める。とくんとくんと心の臓が聞こえてきて、鼓動が感じられて、彼はこうして今いるということを自覚してしまう。これ以上何か言ったら私はつい是と言いそうだ。
「君の哀しみも、嬉しさも、全て全て分かち合いたいんだ。だからどうか今じゃなくていいから返事を……」
―――嗚呼、なんてずるい人。そんな目で、そんな声で、言われたら貴方に縋りたくなっちゃうじゃないですか。
そう私は思いつつ、何か言葉を返そうとすれど、声が詰まって出てこない。
「……ってごめん、霜ちゃん。泣かせちゃって……」
「―――え?」
どうやら私は涙を流していたらしい。彼の武骨な手が私の目元を拭う。目の前の彼も心なしか哀しそうに見えた。
「やっぱり君は……そうだよね。いきなりこんなこと言われたら」
「ちが、そのあの……嬉しくて、貴方に縋りそうなのがとても怖くて……」
その言葉を聞いた彼は、私を強く抱きしめた。暖かくて、夢を見ていると錯覚するほど心地いい。まるで触れたら壊れそうで、でもずっといたいと思えるような感触。
「じゃあ、俺と夫婦になってくれる?」
「――――はい」
無論、愛する人からの申し出を拒否する理由もなく、むしろ嬉しかった。暖かい寝台の中、私は愛する人の温もりに溺れる。そして、強く、硬く私は愛する人と結ばれた。
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