「……おんやぁ、蓮ちゃんじゃあないの」
「すみませんなんで隊長がここにいらっしゃるんですか」
八番隊隊舎にて、仕事終わりにどこかふらりと蓮が出掛けようかと外出する準備をしていたらできすぎた偶然で隊長と出くわしてしまった。いきなりのことで心臓が跳ねるような感触を覚えつつ、自らのちょっとした間の悪さのような何かを内心呪いつつ、何事もないような目で京楽隊長を見る。
「何って、これからのみにいこうとしてたんだよねぇ」
「……残ってる仕事とかどうするんですか隊長」
「まあそれは後々考えるとして……」
返答代わりに蓮は自分の足をちょいと男の足の上に乗せ、体重を少しだけかける。
「っくっ! 蓮ちゃんちょっと……」
少しだけ苦悶の表情を浮かべつつも、自分の足を踏んでいる女の両肩に両手を置く。
「っ!」
女の口から息を飲む声が小さく漏れる。だが男の手を払い除けようとする素振りはしない。蓮はちょっとだけ京楽から顔を背けつつ、ふるふると震えていた。
「た、たいちょ……し、しごと、しないと……」
「んー……でもねぇ、ボクは知りたいんだよねぇ。まだ八番隊に入ってきたばっかりの君のことをさぁ」
「いや、その、あのときあった整の女が私であるということで十分じゃないですか!」
京楽は目をうるわせて眉をハの字に曲げて女の顔を覗き込むが返ってくるのは強い口調の返事だった。されどこの男はこれしきのことで諦めるような男ではない。
「それはそうだけど、あのあとのことを含めて知りたいんだよボクは。君という子をね」
ね? と低くどこか甘さを含んだ声でそっと耳元でささやかれる。女は顔をおおって京楽の足を踏んでいた足を慌てて除け、うつむいた。
「ああ、ごめんいやならいいんだよ?」
「……わかりました。その、あの、いいです……よ?」
小さく呟くように女は了承の返事をした。それを聞いた京楽は女の手をとってゆっくりと立たせる。
「ありがとね、蓮ちゃん。早速だけどいいところを知ってるんだ。今日はそこでゆっくり……」
「でも、そのあときちんと仕事片付けましょう?」
「手厳しいねぇ」
そして二人は尸魂界の飲み屋へと向かっていった。そして途中乱菊と遭遇して三人で飲んで、蓮がとんでもないことになったのはまたあとの話。
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