誰もいないあいだに
太陽は西方へと沈み、空は橙と紺に滲む。黒い死覇装を纏った仕事終わりの死神たちの群れをかき分けて私は走る。細い腕で抱えるは三本の酒の瓶。桃色の布地に花柄の友禅染を施された風呂敷に包まれたそれを抱えて私は八番隊隊舎へと向かっていく。「す、すみ…
京楽夢
海底撈月
「っはー……ああ、いいねぇ、本当にいいよ。ちゃんも一緒にどう?」「京楽隊長、その、いいんですか? 私なんかが隊長と一緒にこう……月見酒しても」「いいのいいの、山のような仕事も終わったしちゃん頑張ってるしさぁ」 瀞霊廷、護廷十三隊の八番隊の隊…
京楽夢
年の瀬に
「―――いや、あり得ないですよまさかここまで仕事をため込んでいたとは」「いやぁあまりにも量が多くてね……」 八番隊隊舎にて、年の瀬にも関わらず京楽春水は書類としぶしぶ向き合っていた。日頃の行いを示すかのようにその山は高く積みあがっている。基…
京楽夢
私はそんなに弱くないから
「―――京楽隊長、話とは」「こんな夜更けに呼び出してすまないねぇ、ちゃん。少し君と酒を交わしつつ話がしたかったんだよ」 八番隊隊舎の縁側にて、二人は満月が藍色の空に浮かぶのを眺めている。京楽の右手側にいるは相変わらず緑の目を伏せている女。女…
京楽夢
攻防戦
「……おんやぁ、ちゃんじゃあないの」「すみませんなんで隊長がここにいらっしゃるんですか」 八番隊隊舎にて、仕事終わりにどこかふらりとが出掛けようかと外出する準備をしていたらできすぎた偶然で隊長と出くわしてしまった。いきなりのことで心臓が跳ね…
京楽夢
小径捜索戦/零
決して、手を伸ばしてはならない。決して、欲しがってはならない。決して、振り向かせてはならない。決して、あの人の顔を見てはならない。これが私が自分自身に課した決まりであり、枷である。無尽蔵にあの人を、あの人のことを欲しがってしまいそうだから…
京楽夢