異物挿入ネタ
平時の成都にて、一人ひっそりと馬岱は紙に筆を滑らせていた。龍。虎。鳳凰。足元には草花で、夜空を見上げ雄たけびを上げる錦馬超。桃の花の元で、なにか物欲しそうに手を伸ばす憂いを帯びた女。彼はそれらを描いた後、誰の目にも触れられぬよう木簡の下にしまい込む。だがしかし、それは偶然にも彼の血縁者に見られてしまった。
「おう、馬岱! 今日は絵を描いていたのか」
「わ、若、いつの間に……! まあ、紙が手に入ったからね」
「そうか、で、何を描いてた?」
と、馬超はおもむろに紙の束を手に取り従弟が描いたもの――馬岱の恋人を描いた絵以外――を見た。相槌や、時折の叫び声、そして自分が描かれている時は、非常に興奮した様子で「お、俺が描かれている、だと……!」と目を輝かせていた。
「すごく、喜んでくれたようで描いたこっちも嬉しいよ! 若」
「他ならぬ馬岱が描いた絵だ、喜ぶに決まっている!」
と、馬超は絵を持って意気揚々とその部屋から出た。
小さくなっていく背中を見届けた後、男は木簡の下から、そして寝台の下から紙の束を取り出す。そして馬岱はそれを一枚一枚、大事そうに眺めていた。そこには、女の絵が描かれていた。梅の下で微笑む姿、仙女の様に水浴びをする姿、少しだけ恥じらいを帯びた表情で手招きする姿、あられもない姿で寝転がって一人遊びに耽る姿、そして他でもない馬岱自身に抱かれている女のすがた……。恋人である本人にはとても見せることは出来ないような絵の数々。岱は、そんな独りよがりの感情をこっそりと絵によって昇華させていた。そして、その絵は全て封印していた。醜い欲を膨らませた果て。見せてはいけないという背徳感故の隠匿。しばらく戦いで恋人と離れ離れになっていた上に、やっと数日前に戻れたようなものである。再会したと同時に、拗らせていた思いが溢れ、変換され、その果てがこの絵たちである。
「さすがに、これは誰にも見せられないよ……」
自嘲した笑みを浮かべ、馬岱は白い紙に筆を滑らせる。瞬く間に墨は女の形を成していく。そして出来たのは、波打つ黒髪で柔らかそうな肢体を覆っている女の姿絵だった。嗚呼、と男は感嘆を漏らししばらくそれを眺めていた。
「――――――うぇっぷ」
途端、体に熱が帯びるのを感じた。どくんと体の芯が脈打ち、熱量がほとばしる感覚。回想するは数多の熱情の夜。愛する女が男の名を呼ぶ声が脳内で響く。そして、気づけば欲は白いものに変換され、絵に描かれた女に向かって爆ぜさせてしまっていた。ゆっくりと熱が覚めていき、ありのままの現実を認識する。新たな染みが作られた紙、変わらない表情の女。絵の中とはいえ愛する人を穢してしまったという自責の念から男はそっと大事そうに絵を寝台の下にしまおうとした。時だった。ぱたぱたと足音が聞こえてきた。何かを待ちわびたかのように、まるで子供の様にかけていく。そしてそれは馬岱のいる空間に向かっていった。そして、音は止まり少しだけ息を切らした女は、その空間へと足を踏み入れる。
「馬岱殿……?」
部屋の入口に、絵に描かれた張本人が立つ。瞳はじいっと馬岱の手に持ってある紙束、そして一人熱情を弄んでいた男を見ていた。女の厚い唇からは、どこか切なげな溜め息が漏れ、顔を綻ばせた。
「……馬岱殿?」
女は少しばかり熱を孕んだ声色で、男の名を呼んだ。馬岱はゆっくりと、後ろの方を向く。まさかのご本人登場で内心焦りを帯びている岱は、彼女から見えない位置に色欲の絵を隠すために手を伸ばそうとすれども、既に絵は女の手に取られ、まじまじと愛する人の欲求を”鑑賞”した。自分がどのような目で見られたか、そして、愛する人の心の内を確かめるように。
「あ、ちょっと待ってよぉ……!」
制止する作者の声も聞かず黙って作品を楽しみ、どこかほっとしたかのような顔をした。
「……貴方にも、そういった欲求があったのですね……あ、その。安心しました……。私を思っているなんて……」
女は顔を赤らめつつ、かわるがわる男の顔と絵を見る。
「それはね、まあ俺も男だから……でも本当にごめんね、ごめん。ほら、もう捨てるから」
ほら、と馬岱は絵を回収しようとした。だが女は穢れた紙束を胸に抱え、胸の内をそっと明かす。
「……でも、こういったの描いていたんでしょう? その、私も……ずっと、そうされたかったのです。ちょっと長い間、貴方のぬくもりを忘れてしまいそうだったから」
女は伏し目がちに、一つひとつ言葉を紡ぐようにして答えた。言い終わった後、女は顔を覆って「わ、忘れてください……」と言いかけたが、それはたった一回の深い口づけによって閉じられる。唾液同士の水音、そして絡み合う舌。それだけで女の理性を奪うには十分で、すぐに出来上がった恋人がいた。
「……もう、本当に俺も寂しかったんだから……! 長く出会えなかった分、君を愛するよ」
そう言って馬岱は、少しだけ乱された寝台に女を組み敷いて、互いに覆っている布を取り、口づけをした。
「あ、ふで、筆は……あ、やぁ……!」
女は、陰部を筆でいじられ身を悶えていた。愛しい人からもたらされる刺激は甘美で、天にも昇るような心地であったが、温もりはそこになく、目の前の男はただ笑っていた。
「嬉しいよ、君がそんなにまで鳴くなんてさ……!」
男は嬉々として、筆の動きを早くしたり遅くしたりする。そのたびに女の声からは声にならない声が出て、さらに腰もわずかながら動き始めた。
「ごめんね、俺の欲望につき合わせて……。嫌がったら、やめるからその時は言って欲しい」
馬岱は眉尻を下げて詫びたが、女はふるふると首を横に振った。
「だいじょう、ぶだから……。あなたに、こんなに求められることが、どんなに、ここちい、ことか……!」
女は涙目で笑いながら、次々とやってくる快楽の波に溺れる。目の前の男に辱められながらもそれがとても至上の幸福のようによがり、時折手を馬岱の方へ伸ばしていた。しかし馬岱はそれを手に取ることはなく、どこに筆を動かせばいいのかを考えていた。
時折、割れ目に筆を滑らせる。最初の内はなにもなかったが、何度か滑らせるうちに穂先に透明な液体が糸を引くようになっていた。それに気づいた男は筆の先を割れ目に少しだけいれるも、上手くいかず跳ねる腰の中で湿らせる程度にとどまった。
「ああ、これ位濡れているのなら大丈夫だね。でもちょっと痛いかもしれないから我慢してくれないかな?」
馬岱は穂先を弄びながら液にからめとられた毛を弄ぶ。女は訳も分からず首を縦に振った。
「ありがとう。じゃあ、いれるね」
そう言って男は、軽く指で慣らした後、筆の軸を女のみほとに入れた。奥まで、ではないが股の間から一本の筆があるという光景はいささか滑稽であった。
「ん……んんっ……!」
「ああ、少しきついよね……でも我慢して」
じゃ、動くよと言った後、馬岱は筆の中央部を持って律動をゆっくり始めた。時折下に押し込もう様にこすってやる。女体は跳ね、しっとりとした声と液は然るべきところから絶えず溢れていく。決して形状変化しない堅いそれを、女はただ声を抑えて受け入れていた。
「これね、いつも俺が絵を描いているときに使っている筆なんだよぉ。君の匂いがこうして、刻まれるなんて……嗚呼、考えただけでも、たまらなくなる」
いつもと違うものを入れ、かき乱される。そして男の言葉。女はこれからさらに待ち受けるであろう事象に落ちそうだと思いつつ、更なる波に溺れていった。
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