創作聖杯戦争時空

思索回路

「―――あぁ」 女は工房で人形の調節をしながら思索に耽る。さっきあったセイバーとの戦いで見せたアーチャーの後ろ姿。「あれは、まさしく……」 英雄のようだった。ぽつりと呟いたところではっと言葉を口に戻そうとすれどそれは叶わないことだとすぐに結…

経口摂取

「―――んぅ」 口は男の大きくて薄い唇によってふさがれる。手で押し返そうとしても私の体は男の手とサーヴァント特有の強い力によって抱きしめられていて反抗すらできそうにない。あまりにも突然のことで目を瞑るということを忘れてしまっていたのか私の目…

月下のお姫様

「月がきれいだな、メートル」 倉庫街からほんの少しだけ足を延ばした海岸にて、男は滑らかに口に出す。女は仮面を付けたままこくりと頷いた。「ああ、本当につれないなぁ。それとも恥ずかしくて返事すら返せないのかい?」「生憎、私はそんな浮かれたことの…

救いを問う

 二百年以上経った世界でも、場所がロシアから極東の地に移ろうとも雪が降る時の夜空は変わらない。吐く息は相も変わらず白くてごく普通の人であれば身震いして眉一つすら動かせないくらいの寒さであろうことがうかがえる。当然のことながら今ここで輝いて見…

雪華抱擁

 白い雪が静かに降り積もり、街のすべてを覆い隠そうとしている。繁華街から少し離れた小さな路地裏にて女は地に積もった雪にざくざくと靴の跡をつけている。ふう、と白い息を吐いて空を仰げどただ月も星も出ていない空しかなかった。嗚呼とも言わずに女は前…

決意

 メートルのいない間にオレは探す。決して見せることのない顔の手がかりを。「どうせ醜いから私の写真を絶対に見るな探すな知ろうとするな」 と言われてはいるものの令呪で命じられていないのなら大丈夫だろうと踏んで慎重に既にある物品に重大なダメージが…

無知ゆえの安堵

「お願いだから、もう二度と私のことを可愛いとか言わないで。また云ったのなら今度こそ自害、命じるかもしれないから」 そう釘を刺されて早数日。オレはどうにか彼女の顔を褒めたかった。しかしオレに自害を命じさせるほど彼女の容姿に関して言及を避けろと…

初めての夜の前

「どうしたんですかその格好は」「オテルに備え付けられていたからな、着てみたのだが」 少女の目の前の男は、ただその彫刻の如く逞しい肉体に、軽くバスローブを覆っているだけの格好をしていた。チラリと胸元から傷が覗いている。「あの、アーチャー、その…

原点残滓

「……電話だ」 は規則的に響く電話の着信音を聞き、スマートフォンに映ってある電話番号の持ち主を見た。そこには何も書かれておらず、電話番号だけが表示されていた。「……もしもし、です」「やあ、ちゃん、元気?彼氏できてる?」 誰からのか分からない…

眠れるコッペリア

「また、寝落ちしてるなオレのメートルは」 澄み切った空気の元、少女は安物のソファに横たわっていた。手はだらりと地面に向かっておろされて、シンプルなワンピースはところどころに皺が出来ている。男は起こさないようにそっと女の体を抱えた。「寝るのな…