メーデー212

ジュネス

(の手記より一部引用) 浸食される過程の記録を保存しよう。誰かが私を救ってくれるのを期待して。 苦痛の記録を炉にくべよう。誰かが読んで余計な情けをかけられることがないように。 しかしてこの記録はどうしようか? 救いを待つか、罰せられるのを待…

メール

「―――あ」 どこかの特異点にて、海があったのでぴちゃぴちゃと足を浸してみる。朱色が海に沈みゆく光景はどこか終わりを感じられて私は好きだ。私の生まれたところでは西方に死後の世界があるという。きっと命の終わりを落日になぞらえたのだろう。 裸足…

パヌ

「―――おい、お前。助けてと云いたいのなら助けてと言え。というか素直に痛いなら痛いといっていいんだ」 アイスはどこかと冷凍庫を漁っていたら背後から低い女の人の声がした。振り返ってみたらざんばらに切り揃えられた黒髪に青い着物に赤いジャケットを…

ヴァルール

 バーの持主の鑑定力並びに目利き能力が優れていることを示す美術品がカウンター越しに並べられている。それらに描かれている人々が見守る中、三人の男たちが会話をしていた。「いや、メートルには自信を持ってほしいとオレは思うわけなんだよ」「なるほどな…

コンフェッシオン

(の手記より抜粋) 私は決して許されない罪びとです。やってはならないということを常にしでかしている罪びとです。誰にも開示することが出来ず秘密にしているようなことがあることをここに懺悔します。 よく世の中で云うようなことに「嫉妬してはならない…

デジール

 彼女はずっと、自分自身に枷を付けているようだった。彼女自ら自分自身の嫉妬心やら恋慕の情、そのほか諸々を抑圧し、我慢しているように見える。それが当然であり義務であるかのように振舞うが、その在方は事情を少しだけ知っているオレからしてみればとて…

サリュ

「―――っ」 夜明け前のノウム・カルデアにて私は腕をまくる。そして隠し持っていた三角定規を左腕に当てて、そのまま切りつけた。自分自身を罰するための行為はもはや習慣化していてこの光景を医療関係のサーヴァントたちに見られたらたちまち私は大目玉だ…

ニュイ

「よし、もう動いていいぞ。ただしあまり派手に動くな。捻挫は一度やらかすと癖になるからな。お前がそういうことをやらかす愚患者でないことをは知っているが……」「はい、先生。ありがとうございます」「よし、ではお大事に」 医神によって湿布を取ってい…

ルナ

 その女は、虚勢を張ることでしか自分自身を内なる呪いから守れない。否、それしか方法がなかった。その呪いすら並大抵の精神で耐えられるわけがなくその精神力がカルデアに来た時点で喪失していた彼女は耐えるだけで精いっぱいだった。 そんな彼女は、今は…

アムール

 青い瞳が、焼き付いて離れない。夢に見た時からずっと忘れられなくて永遠にみられていたいほどに。 逞しい背中が、脳裏に焼き付いている。あの背中に縋りたくなるほどに。 心が、きしんでいる気がする。割れ目から黒く粘り気のある泥―――バビロニアで見…

オンブル

 彼女はよく働き、思考する女だった。ダ・ヴィンチの要請があればすぐ飛んでいき機材トラブルを直し、英霊間でのトラブルがあれば必死に説得してなんとか矛を収めさせる。カルデアのメートルの手が届かない範囲をカバーするように動いている所謂潤滑油のよう…

エトワール

 きっとその日は、たとえどんなことがあろうとも忘れることはないだろう。そのきらめきが私の胸から途絶えようとも、あの澄んだ空気の中出会ったあの瞬間のことを。◆◆◆ 石を抱えて私は召喚サークルへと歩んでいく。使用許可が下りた石は三つのみ。何でも…